研究について

研究成果

津波が係留船舶に及ぼす影響に関する模型実験と数値計算

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1213 2010年06月
執筆者 米山治男、大垣圭一、津田宗男、栗原明夫、平石哲也、青野利夫
所属 未分類 未分類
要旨  近い将来、東海・東南海・南海地震が起こると予測されており、これらの地震に伴う津波の危険性が危惧されている。港湾域には多くのインフラが集中し、エネルギー港湾も多数存在するため、津波の影響が非常に大きなものになると予想されている。この時、港湾内の船舶の被害を防止するためには船舶の港外避難が最良の方法である。しかし、津波が港湾に近い場所で発生した場合は、船舶は港外へ避難することは難しく、津波が係留船舶や係留施設に直接影響を及ぼす可能性は高い。これまでのところ、津波作用時の係留船舶の挙動や係留施設への影響については十分に研究が進んでおらず、津波に対する係留船舶の安全性を適切に評価する手法がないのが現状である。  本研究では、港内に津波が来襲した場合の係留船舶の応答特性と係留施設へ及ぼす影響を解明するために、桟橋等の透過型岸壁を対象とした模型実験を実施した。また、津波外力をモリソン式で表現して係留船舶の動揺計算を行い、実験結果と計算結果を比較することにより、その数値計算手法の妥当性について検討した。  その結果、以下のことが明らかとなった。 1) 津波の周期が短い時、津波の最大流速が大きい時、船舶の積載量が大きい時ほど、桟橋に係留された船舶の動揺量は大きくなる傾向がある。 2) 桟橋に係留された船舶の津波応答特性は津波の入射角度によって大きく異なり、船舶は津波の流れと同じ方向へ動揺し、船幅方向から津波が作用する場合に船舶の動揺量が最も大きくなる。 3) 係留船舶の船首尾方向よりも斜め方向もしくは船幅方向から来襲する流速の大きい津波に対して、係留索や防舷材が損傷する可能性が高くなり、このような場合に係留施設の安全性は低下することになる。 4) 船舶の動揺量、係留索張力、防舷材反力について、模型実験による結果と数値計算による結果はおおむね精度良く一致していたことから、提案した数値計算手法により、実際の港湾における船舶や係留施設の安全性を予測することができる。
全文 /PDF/no1213.pdf