研究について

研究成果

台風来襲時の東京湾羽田沖における底泥移動現象

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 049-02-06 2010年06月
執筆者 中川康之、有路隆一
所属 海洋・水工部 主任研究官
要旨 流れや波浪等の外力に対する底泥の巻き上げや、侵食・堆積等の移動機構の解明を目的として、東京湾多摩川河口沖 (水深約23m(D.L.))にて流況や濁度等の水質に関する連続観測を2007年8月中旬から同9月中旬にかけて約1ヶ月間実施した。観測では超音波式3次元流速計による底面直上の詳細な流速測定や、鉛直多点に設置した光学式濁度計による巻き上げ泥の濃度測定など、時空間的に高解像度な外力と浮遊懸濁物濃度の時系列データの取得を試みた。観測期間中には、台風0709号の通過に伴う高波浪や大規模な出水が東京湾内で発生し、本調査ではこれら擾乱時を含めた観測データの取得に成功した。本報告では、底泥に作用する外力(底面せん断応力)と底泥の巻き上げの関係について調べたほか、超音波式流速計により得られる音波反射強度のデータを活用し、台風擾乱時を通じた懸濁物の巻き上げフラックスや底泥表面高さの時系列変動についても検討した。その結果、通常時には大潮期の潮汐流が作用する程度では底泥の巻き上げはほとんど生じていないのに対し、台風時に発生した高波浪(有義波高2.5m以上、同周期5秒以上)および流れ(流速20cm/s以上)の作用により顕著な巻き上げが生じることを確認した。また、巻き上げに伴う堆積泥の侵食のみならず、河川出水等により供給されたと考えられる懸濁物の堆積も生じており、これら侵食・堆積時には底泥表面高が最大で20mm(侵食)、50mm(堆積)の規模で、それぞれ変動していたことを示した。
全文 /PDF/vol049-no02-06.pdf