研究について

研究成果

溶液型薬液注入工法を用いた滑走路地盤の液状化対策に関する研究

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1206 2010年03月
執筆者 菅野高弘、中澤博志、池野勝哉、三藤正明
所属 地盤・構造部 耐震構造研究チーム
要旨  地震災害時に脆弱な線的インフラである道路や鉄道の代替手段として、拠点間を直接結ぶことのできる空路への期待は大きく、防災強化を含めた空港の耐震化が必要不可欠である。しかし、既設の空港用地における液状化調査によれば、約4割の空港が大規模な地震動に対して液状化の可能性が示唆されており、特に航空ネットワーク上重要な空港に対して、早急な液状化対策が求められている。一方、近年では設計体系が性能規定型に移行し、従来のように液状化対象層の全てを対策するのではなく、致命的な被災を軽減し、比較的簡単な補修によって対象施設の性能を確保する合理的な対策が可能となった。  本資料では、滑走路直下を供用しながら施工可能な溶液型薬液注入工法に着目し、事業費のコストダウンを念頭においた滑走路地盤の部分改良に関して検討を行った。未改良砂・改良砂の液状化抵抗特性や体積変化特性を調べるために、非排水繰返し三軸試験および単調せん断試験を実施した。さらに、部分改良を施した場合の定量的な沈下低減効果について調査するため、模型レベルから現場レベルまでの実験を行い、総合的な考察を行った。  主要な結論は以下の通りである。  1)溶液型薬液注入工法の改良砂は、繰返しせん断や過剰間隙水圧の伝播等による土粒子の移動など、骨格構造の変化や攪乱の影響を受けにくい傾向がある。  2)滑走路直下の水平成層地盤において、液状化対策を目的に溶液型薬液注入工法を適用する場合、部分改良率は70~100%の範囲で設定が可能である。  3)地震時における滑走路地盤の変形予測には、便宜的に地震応答-圧密の2段階解析手法を用いることができるが、模型実験等で対象地盤の体積変化特性を把握しておくことが重要である。
全文 /PDF/no1206.pdf