研究について

研究成果

密度流・湧昇流の計算を目的とした三次元沿岸域流動モデルの開発について

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 049-01-01 2010年03月
執筆者 田中陽二、鈴木高二朗
所属 海洋・水工部 海洋環境情報研究チーム
要旨  沿岸の海域は陸域からの栄養塩が河川から流入し、プランクトンによる一時生産が活発に行われ、魚類も豊富に存在し、生態系にとって非常に重要な海域である。一方で、沿岸に近い陸域では都市化が進行している地域が多く、栄養塩負荷の増大によって赤潮や青潮などの発生が問題となっている。このような複雑である沿岸域の水環境を解析し、現状理解や対策の立案を行うツールとして、数値シミュレーションモデルは非常に有効である。従来の数値モデルは計算コストの関係から、静水圧近似を仮定したモデルが一般的であった。しかしながら、湧昇流や河川水の流入などは、静水圧近似では再現が困難であることが指摘されている。  そこで、本研究では沿岸域に適した高速な計算ができる非静水圧近似の三次元流動モデルを新たに開発することを目的とした。加えて、開発されたモデルを用いて、モデルの精度と適用性を確認するため、種々のテスト計算と、伊勢湾での数値シミュレーションを行った。  テスト計算として、吹送流問題、スロッシング問題、窪地への外洋水の流入問題を取扱い、モデルの精度を定量的または定性的に確認した。  伊勢湾の年間を通じたシミュレーションを行った結果、潮汐成分は良く観測値と適合していた。年間を通じて塩分・水温の計算結果も観測値と良く一致しており、水温の季節変化や、表層塩分の河川との対応が適切に再現されていることを確認した。  本研究で、沿岸域の流動・水質計算用に開発された新しいモデルは、沿岸域の水環境を解析・予測するツールとして有用であることが示された。
全文 /PDF/vol049-no01-01.pdf