研究について

研究成果

ブシネスクモデルを用いて算定したリーフ上護岸の設計諸元に関する考察

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 048-03-02 2009年09月
執筆者 平山克也、春尾和人、宮里一郎
所属 海洋・水工部 波浪研究室
要旨  一般に、護岸の天端高は、沖合より波浪変形計算等を行って換算沖波波高等の設計諸元を算定した後、合田(1975)による越波流量算定図を用いて推定される越波流量が、対象となる護岸背後の利用状況や重要度に応じて決められた許容越波流量を超えないように決定する。しかし、沖縄周辺の海域は、浅瀬やリーフ地形といった複雑な海底地形が発達しているため、単純に合田の越波流量算定図を適用することが難しく、このような設計諸元の算定法を確立することが長年の課題となっている。  宮国ら(2008)は、リーフ地形をモデルとした断面越波実験を行い、リーフ上の短周期波高をもとに、リーフ上の砕波等による平均水位上昇量や、サーフビートに伴う水位変動量を設計潮位に考慮した上で、合田の越波流量算定図を適用する方法を提案し、算定値が実験値と非常に良く一致することを示した。ただし、この適用にあたっては、リーフ上のこれらの波浪諸元を何らかの方法で精度良く見積もることが不可欠である。  そこで、本研究では、浅瀬やリーフといった複雑な海底地形での波浪変形特性を精度良く計算できる最新のブシネスクモデル(NOWT-PARI,Ver5.3)を用いて、リーフ上護岸の設計諸元を算定する方法を提案した。すなわち、リーフ周辺の複雑な海底地形による屈折や浅水変形、およびリーフ上の砕波や遡上等を考慮して、リーフ上護岸前面の波高分布を算定した。また、同時に計算される砕波等による平均水位上昇量およびサーフビートに伴う水位変動量を算定して、リーフ上護岸前面の設計水深の設定法を示した。さらに、この設計水深とリーフ上護岸前面波高を用いて、設計換算沖波を算定した。  このようにして算定したリーフ上護岸前面の設計諸元を現地へ適用することにより、複雑な波浪変形が生じるリーフ上護岸においても合田による越波流量算定図が利用可能となり、適切な設計を行うことができる。
全文 /PDF/vol048-no03-02.pdf