研究について
研究成果
任意形状スペクトルによる多方向不規則波の造波法の提案
発行年月 | 港湾空港技術研究所 報告 048-02-09 2009年06月 |
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執筆者 | 平山克也、宮里一郎 |
所属 | 海洋・水工部 波浪研究室 |
要旨 | 浅海域において港湾・海岸構造物を設計する際には、沖で観測あるいは推算された方向スペクトルをもとに、海底地形等による波浪変形を考慮して、周辺波浪場を予測することが必要である。近年では、この波浪場の予測に数値解析手法が用いられることが多くなってきている。 一方、日本沿岸の十分深い沖合で観測される波浪スペクトルは、ブレットシュナイダー・光易型の関数スペクトルを用いて表現されることが知られている。そこで、沖波スペクトルを入力とし、浅海域での複雑な波浪変形を精度よく算定できるブシネスク型の波浪変形計算モデル(港湾空港技術研究所が開発したモデルでNOWT-PARIと通称する)では、これまで標準的にブレットシュナイダー・光易型スペクトルを用い、これと光易型方向関数を組み合わせて、多方向不規則波を造波することにより、我が国の港湾・海岸の設計波の算定等に大きく貢献してきた。 しかしながら、近年の沖合波浪観測における観測点の増加や観測時間の連続化に伴い、高波浪時には、よりピークの尖ったスペクトル形状や、互いに波向きの異なる風波とうねりが重畳した2山型の方向スペクトルも度々観測されるようになり、このような波浪来襲時における高精度波浪変形計算の必要性が高まっている。一方、実際の実務計算においては、NOWT-PARIの計算コスト節約のために、線形理論で表わされる比較的沖合の波浪変形は従来の線形波浪モデル(エネルギー平衡方程式法)で計算し、浅海域で両者を接続することがよく行われる。このとき、できるだけ岸に近い海域で両者を接続できれば非常に効率的であるが、ある程度浅く非対称な地形上では、屈折・浅水変形等により、接続境界上のスペクトル形が沖合のものとは相似しない複雑な形状へと変化する。 そこで本研究では、より多様化する入射波条件に対応できるよう、現地観測や他の計算モデルで得られた任意形状スペクトルに対し、エネルギー等分割によるシングルサンメーション法を適用し、長時間に渡って多方向不規則波を適切に造波する手法を提案した。さらに、これをNOWT-PARIへ適用して、その際に必要となる任意形状スペクトルに対する波高統計量の算定方法についても提案した。 本研究の成果により、現地の波浪状況に合わせた波浪変形計算が実施可能となり、さらに、エネルギー平衡方程式法とNOWT-PARIの利点を生かした波浪変形計算モデルの構築が可能となった。 |
全文 |
/PDF/vol048-no02-09.pdf
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