研究について

研究成果

信頼性設計に基づく性能設計実現に向けた新しい地盤定数設定法の提案

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 048-02-06 2009年06月
執筆者 渡部要一、田中政典、佐々真志、菊池喜昭
所属 地盤・構造部 土質研究チーム
要旨 各種施設の設計基準に、信頼性設計や、それに基づいた性能設計が本格的に導入されつつある。2007年に制定された新しい港湾基準は、性能設計が本格的に導入された我が国初の設計基準であり、その中で、筆者らが提案する新しい地盤定数設定法が採用された。一般に、性能照査に用いる地盤定数は、地盤工学会基準JGS4001や欧州規格Eurocode7に基づき設定される。特性値は原則として導出値の平均値であるが、単なる導出値の算術平均ではなく、統計的な平均値の推定誤差を勘案しなければならない。しかし、実際には、堆積状況のばらつき、調査・試験法に起因した誤差、限られたデータ個数等を勘案した上で、地盤パラメータに対して統計処理をすることが要求される。新港湾基準に採用された提案方法は、統計的な取り扱いを簡略化することによって実務での使いやすさを追求するとともに、95%信頼水準に対応した値とほぼ同等になることから、JGS4001やEurocode7といった包括的な基準とも整合した、合理的でかつ簡略化された特性値の設定法である。この方法は導出値の平均値あるいは回帰式によってモデル化して深度分布を推定し、変動係数やデータの数量に応じた補正係数を導入して特性値を設定するもので、JGS4001やEurocode7の包括的な基準を実用的な形で具体化することを目指している。従来、データにばらつきがあったり、データの個数が不足したりしているときに、技術者の判断で安全側に地盤定数を設定していた。提案方法では、このような技術者の判断の部分を変動係数に応じた補正というかたちで体系化して置き換えていると考えることができる。変動係数を小さくすることを目的に据えることにより、データの適切な解釈と適切な深度分布のモデル化が導かれるとともに、再圧縮三軸試験のように、ばらつきが小さくなる試験法の導入が進むものと期待できる。
全文 /PDF/vol048-no02-06.pdf