研究について

研究成果

潮流と海浜流による砂と凝集性土砂の底質輸送と干潟の地形変化に関する3次元数値モデルの開発と現地適用

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 048-02-02 2009年06月
執筆者 鵜﨑賢一、栗山善昭
所属 海洋・水工部 沿岸土砂管理研究チーム
要旨 干潟の動的安定性を維持するためには、干潟の地形変化を予測する手法を確立することが必要となる。干潟の底質移動では潮流が支配的な因子であると考えられるが、大きな底質輸送と地形変化が生じる満潮の暴浪時などでは、風波による巻き上げや海浜流による底質輸送を無視することはできない。とくに干潟の地形変化を予測する上では潮流と海浜流を同時に考慮することが非常に重要であると考えられ、そうした計算が現地の地形変化をどれだけ精確に再現できるかを十分検討した例はない。また干潟は、砂質干潟から泥質干潟まで含泥率によって異なった底質特性の干潟が存在し、砂と泥・シルト(凝集性土砂)とではその挙動が大きく異なることから、干潟の地形変化を予測するためには漂砂量モデルを導入する必要がある。そこで本研究では、Princeton Ocean Model(POM)にもとづいた凝集性土砂の3次元底質輸送モデル「WD-POM」に波と流れの相互作用を渦度の形で明示的に考慮したbody forceと砕波による表面せん断応力からなるwave forcing termを導入するとともに、凝集性土砂の輸送モデルに加えて漂砂量モデルを導入し、潮流と海浜流による砂と凝集性土砂の底質輸送と地形変化に関する3次元数値モデルの開発を行なった。そして海浜流と砂に関するテスト計算を行って改良モデルの妥当性を検証するとともに、有明海の白川河口干潟に適用して干潟の底質輸送と地形変化の再現性について検証を行った。テスト計算の結果、離岸堤背後において1対の水平循環流が形成され、循環流による底質輸送によって汀線から舌状砂州が発達する様子が再現された。さらに、一様勾配海浜上の斜め入射波による沿岸漂砂量について、CERC公式によって求められた沿岸漂砂量と比較的良好に一致した。以上の結果から、改良モデルは海浜流と砂による底質輸送と地形変化を精度よく計算することができることがわかった。白川河口干潟に適用した現地計算の結果、栗山・橋本(2004)による深浅測量データをもとにした地形変化量の空間分布を定性的に再現し、定量的にもオーダーとして一致することがわかった。また、潮流のみの場合と重合計算の場合の結果を比較することで、干潟の地形変化予測においては潮流と海浜流を同時に計算することが重要であることがわかった。最後に、土砂収支量についても栗山・橋本(2004)による算定結果とオーダーとして一致することがわかった。
全文 /PDF/vol048-no02-02.pdf