研究について

研究成果

ナウファス海象計が捉えた地震時短周期水圧変動

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1189 2008年12月
執筆者 永井紀彦、野津厚、河合弘泰、佐藤真
所属 統括研究官 総括研究官
要旨  従来の津波警戒情報は、もっぱら地震観測情報に基づいて解析・発信されているが、地震のマグニチュードは発生津波高に必ずしも良好に対応するものではなく、津波警戒情報そのものの信頼性は十分高いとは言えない。  本稿では、全国沿岸の浅海域に設置されている海底設置式海象計の水圧変動計測センサーが捉えた、2005年宮城県沖の地震、2007年能登半島地震および2007年中越沖地震による近地津波来襲に先立つ短周期水圧変動観測記録を示し、続いて来襲した津波および近傍陸上強震観測点における地震動加速度の観測結果との比較検討を行った。同時に、津波の発生を伴わなかった2008年岩手・宮城内陸地震時における観測記録に関しても同様のとりまとめを行い、海象計による短周期水圧変動検知情報を将来の津波予知に応用する可能性についても考察を行った。  本稿の主要な成果は以下の通りである。  ・浅海域沿岸波浪計による短周期水圧変動観測は、ナウファスの切れ目のない連続的なデータ測得よってはじめて観測可能となった事象であり、地震動が海水に及ぼす影響を直接検知するものである。  ・短周期水圧変動の継続時間について、近傍の地震動との比較を行った。地震動と水圧変動の継続時間の差は、地盤条件の相違による地震動そのものの相違である可能性があるが、今後のより詳細な観測とデータの蓄積によって、検討しなければならない大きな課題である。  ・観測された地震動の最大加速度両振幅から推定される最大水圧変動両振幅と、観測結果から得られた最大水圧変動両振幅の比βを定義し、その値を調べると概ね2.0に近い値であった。表現を変えれば、直江津沖以外の海底水圧変動は、海象計上の水塊の1/2程度の量の水塊が地震動の鉛直加速度にあわせて運動していることに相当する量となっていることを意味する。このように、海底の地震動がそのまま表面に伝播しないのは、海水の圧縮性の影響や、水塊の上下運動に周期依存性があるためと思われるが、今後更に観測データの蓄積と解析が必要である。  ・スペクトル解析を試み、短周期水圧変動の周波数特性についても検討した。
全文 /PDF/no1189.pdf