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研究について
研究成果
親水機能を有する海域構造物の設計の体系化に関する研究
発行年月
港湾空港技術研究所 資料 1188 2008年12月
執筆者
八尋明彦
所属
施工・制御技術部 施工・制御技術部長
要旨
1985年に長期港湾整備政策「21世紀への港湾」が,“潤いある豊かな総合的な港湾空間”を目指して立案された.この政策に基づいたマリーナを核とした沖合人工島方式の“和歌山マリーナシティ”と市民に開かれた港とする“サンポート高松”の開発においては、外洋に面する防波堤や護岸を市民に開放することになった。このため,これらの施設は、市民が海に親しみ楽しむために,立ち入ることを前提にした親水性構造物として整備されることになった。しかし,港内の静穏度を確保し,埋立地背後への越波量の抑制を主目的とする既往の海域構造物の設計手法では,3つの設計上の課題があった。本研究では、これらの課題の解決を試み,以下の結論を得て親水性を有する海域構造物の設計の体系化を図ることができた。 (1)1つ目の課題は、如何に“親水性が高く安全な空間“を形成するかである。海と人間社会という二つの領域に立ち戻り,それらの境界に位置する水際線を「連繋域」としてとらえ,二つの領域を連繋する手段として「視覚」に着目し,それを通じて自然美と自然の脅威を市民が認識できるようにするという設計概念を構築した。この概念に基づき自然の美を感受できる視点場の形成手法、またその空間を魅力あるものにするための景観の形成手法,さらに視点場からの眺望や景観についてのシミュレーション手法を提示した。同様にこの概念に基づき安全性を確保するために,自然の脅威、特に越波を視覚によって感受できる親水空間の形成手法を提示し,併せて危険の状況に適応した安全管理手法を提示した。そして、これらの設計手法が、サンポート高松の親水性構造物に対する市民の評価結果等に基づき妥当であることを検証した。 (2)2つ目の課題は、如何に波浪に対する親水性構造物の安定を確保するかである。和歌山マリーナシティではダブルデッキ型防波堤と二重円筒ケーソン堤,またサンポート高松では消波式階段護岸の構造形式を開発し,これらの構造形式を現場へ適用する際の水理実験と実海域試験の事前実施方法及び波浪の反射や伝達等に関する構造物の機能特性及び作用波力を確認する方法等を提示した。 (3)3つ目の課題は、如何に親水機能を持続させるために施設を維持管理するかである.ここでは完成後5年間を経ても依然市民から高い評価を得ているサンポート高松の実例と既往の研究に基づいて,親水機能を持続させるための維持管理手法を提示した。
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