研究について

研究成果

工事用作業船を転用した油回収システムの開発

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1185 2008年12月
執筆者 吉江宗生、藤田勇、竹崎健二
所属 施工・制御技術部 情報化技術研究チーム
要旨  極東地域における経済活動の躍進もあって、わが国の周辺海域では以前に比べて非常に多くの船舶が通航するようになっている。このため、船舶の海難事故による油濁被害の蓋然性は高くなっている。わが国の沿岸では多くの経済・社会活動が営まれており、油濁被害を最小限に防止するためには早期の油回収などの復旧作業が必要である。  本研究は、全国に900隻余りあるクレーン台船を緊急時に油回収作業に転用するため、緊急時に4トントラック2台程度に積載して陸送できる油回収システムの開発を目的としている。本システムは、「かき寄せバケット式スキマー」と「自動展張式オイルブーム」をパッケージとしている。実油による大型水槽実験によって性能の確認を行い、また、その縮小プロトタイプモデルを製作し、鳥取県境港での実海域での運用試験を行った。  その結果、かき寄せバケット式スキマーについては、水槽実験により、油膜厚さ2cm程度の条件で、 1時間に約5.9トンの油分が回収でき、(Oil Recovery Rate 5.9 t/h )このときの油水中の余水は30%に抑えられる(Oil Recovery Efficiency 70 %)ことが推算(実機サイズ換算)できた。これは同時に実験したグラブバケット方式の5.7 t/h (Oil Recovery Rate )および余水分66%(Oil Recovery Efficiency 34%)を上回る性能であった。また、実海域における運用試験においても本回収機の組立やオペレーション上の問題は特になかった。  一方、自動展張式オイルブームについては、流速0.5knt(約25 cm/s)以上において、その目的である集油ブームとして必要な間口を確保し、安定的にオイルブームを展張しつづけられることが水槽試験で確認できた。しかしながら、海上での運用試験においては、航跡波による横波の影響を受けやすかった事実から、波向きに配慮する必要があることがわかった。また、若干の構造上の改良で現地組立が簡単になることがわかった。
全文 /PDF/no1185.pdf