研究について

研究成果

越波吸収型護岸の越波量低減効果に関する模型実験

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1178 2008年06月
執筆者 齋藤英治、平石哲也
所属 海洋・水工部 波浪研究室
要旨  近年の台風の大型化および海上空港の沖合展開化により、海上空港では高潮・高波による越波の影響で場周道路や護岸のり面の破壊および浸水被害が発生し、航空便の欠航による利用者への影響や電気室等の空港施設の機能障害など、経済的な損失が生じている。空港全体を海で囲まれた海上空港の越波対策を実施するには、まず護岸天端高を上げる対策が考えられるが、空港では航空機の離発着を妨げないよう護岸天端高に制限があり、簡単に天端高を上げることができない。そこで、南ら(2007)によって、護岸を2 重胸壁とし、胸壁間に透水層を設けた“越波吸収型護岸”が提案された。本研究では、越波吸収型護岸の最適な胸壁間距離および後壁高さ等を求めるために、2004年台風16号で越波災害のあった関西国際空港の護岸を対象モデルとして平面模型実験を行った。そして、胸壁間距離などを変化させた場合の越波量の比較により最適な形状の検討を行った。得られた主要な結論は以下の通りである。 1)越波吸収型護岸の胸壁間を排水溝として幅を変えた実験を実施したところ、実験の結果、幅が6m以上になると越波流量が急激に低減したことから、排水溝を有する越波吸収型護岸は、排水溝幅6m以上で高い越波低減効果を示す。また、排水溝幅をさらに拡幅すると、緩やかではあるが、越波流量はさらに低減される。 2)越波吸収型護岸の後壁の高さは、入射波高が2m以下であれば、2.5m程度で十分な効果を示した。また、斜め入射波の場合には、より効果が高くなった。 3)越波吸収型護岸は津波のような周期の長い波に対しても、越波量低減効果を有している。ただし、排水溝幅が18mでも、時間平均越波流量は2.0m3/m/s 程度であり、安全レベルまで越波を低下させるには、より幅の広い排水溝が必要である。
全文 /PDF/no1178.pdf