研究について

研究成果

太平洋北東岸GPS波浪計観測網が捉えた大水深域における海象特性

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 047-02-01 2008年06月
執筆者 永井紀彦、清水勝義、佐々木誠
所属 海洋・水工部 海洋・水工部長
要旨  本稿は、東北沿岸に新たに設置された2基のGPS波浪計によって観測された大水深沖合における海象特性を、浅海域に設置されている既設のナウファス海底設置式波浪計(釜石・石巻)や港内検潮記録との比較の上で検討したものである。国土交通省港湾局では、平成16-17年度に、RTK-GPS技術を応用したGPS波浪計の全国沿岸への展開に関する基本的な検討を実施し、平成18年度からGPS波浪計の全国配置に着手した。東北地方整備局は、このGPS波浪計の全国沿岸への配置のさきがけとして、設置水深144mの宮城県中部沖観測点には2007年3月22日に、設置水深204mの岩手県南部沖には2007年4月6日に、それぞれGPS波浪計を設置し、現在に至るまで大水深波浪観測が継続されており、観測データの蓄積が進められている。本稿の検討対象期間としては、0709号に伴う高波が観測された9月7日を含む2007年4月から9月までの半年間である。本稿の主要な成果は以下の通りである。 ・半年間の検討対象期間を通じて、各観測点では欠測がほとんど見られず、台風0709号通過に伴う高波浪時を含めてデータの測得状況は良好であった。 ・有義波高と周期の結合出現頻度表から、有義波高の出現状況は大水深域と浅海域とできわめて異なった分布となった。有義波高1.0m以下となる低波浪状態の出現率は、宮城県中部沖および岩手県南部沖のGPS波浪計と、石巻港沖および釜石港沖の海底設置式波浪計とで、大きく異なった。 ・GPS波浪計や海底設置式波浪計は、適切なデータ処理を行うことによって、津波よりもさらに周期の長い沖における天文潮汐を妥当に検出できることが、調和分解解析の結果として示された。 ・GPS波浪計は沖合における高潮偏差も示す。ただし、ブイの水平運動の影響が無視できないため、海底設置式波浪計が観測する高潮偏差よりも若干高めの値を得ることには注意が必要である。 ・GPS波浪計は、洋上風の観測にも活用できることが改めて示された。洋上風は、陸上風とは異なり、地形の遮蔽効果がないため、より広い範囲から来襲することが改めて確認された。
全文 /PDF/vol047-no02-01.pdf