研究について

研究成果

局所的に生じた鉄筋腐食がRCはりの構造性能に及ぼす影響

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 047-01-02 2008年03月
執筆者 加藤絵万、濱田洋志、岩波光保、横田弘
所属 ライフサイクルマネジメント支援センター 主任研究官
要旨  海洋環境下における鉄筋コンクリート(RC)構造物は、塩化物イオン等の劣化因子が容易に供給される苛酷な環境に曝されているため、コンクリートや鋼材等の構成材料の劣化進行に伴って構造物全体の性能が低下する可能性がある。特に、鉄筋の腐食は、構造物の耐荷性および変形性などの構造性能に及ぼす影響が大きいことが知られているが、鉄筋の腐食性状と構造物の構造性能の関係は未だ定量的に評価されておらず、その要因の一つとして、鉄筋腐食の局所化が挙げられる。  本研究では、より効果的な構造物の保有性能評価を目標として、局所的に生じた鉄筋腐食が鉄筋の力学的性質およびRCはりの構造性能に及ぼす影響について、そのメカニズムの解明と評価手法の提案を目的とした実験的検討を行った。実構造物から採取した鉄筋の断面積測定と強度試験から、鉄筋の腐食による強度低下はその鉄筋の最大断面減少を考慮することで精度良く評価できることが分かった。また、局所的な鉄筋腐食が生じたRCはりの耐荷性として、降伏荷重は腐食発生位置、主鉄筋の径および本数に関わらず、鉄筋の最大断面減少率を指標として精度良く評価できるが、最大荷重ははり軸方向の腐食発生箇所とその程度、鉄筋の径および本数に影響された。これは、腐食発生箇所や鉄筋の節の残存による断面力と応力伝達メカニズムの違いによるものであることが考えられる。さらに、RCはりの変形性は、その耐荷性よりも敏感に局所的に生じた鉄筋腐食の影響を受け、最大断面減少率を考慮することにより評価できる可能性があることが明らかとなった。  また、実験結果および既往の知見に基づいて、鉄筋の腐食程度やその発生箇所に着目したRCはりの構造性能評価手法を提案した。
全文 /PDF/vol047-no01-02.pdf