研究について

研究成果

フラップ式構造物の波浪および津波に対する水理特性

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1155 2007年06月
執筆者 下迫健一郎、清宮理、仲保京一、大久保寛、由井孝昌
所属 海洋・水工部 耐波研究室
要旨  津波・高潮対策の一つとして、常時は海底に格納し、必要なときに操作して設置する可動式の防御施設(フラップ式構造物)が提案されている。しかしながら、フラップ式構造物の浮上・沈降時における挙動や、津波時における水理特性等については不明な点も多い。したがって、フラップ式構造物の実用化を進めるためには、これらの特性を明らかにする必要がある。  本研究では、フラップ式構造物の水理特性を把握するため、波浪に対する越波、反射波、遡上、波圧に関する水理模型実験を行った。また、段波津波を作用させる実験も行い、津波波力、フラップ式構造物による津波の変形、津波作用時におけるゲートの挙動についても検討した。さらに、静水時における浮上・沈降時の挙動を把握するため、扉体内の空気量を一定にした場合の浮上・沈降実験と、空気量を変化させながらの浮上・沈降実験を行った。本研究の主要な結論は以下のとおりである。 1) フラップの起立角度が大きいほど反射率が大きく、越波流量も多い。 2) フラップ式構造物に作用する波浪による波力については、起立角度が60度以上であれば、合田式による波力と同じかやや小さい程度であるが、45度の場合には衝撃的な波力が作用して合田式よりも大きな波力となる場合がある。 3) 段波津波による衝撃段波波圧は、固定式で起立角度が90度の場合には池野らの提案した波圧分布とほぼ一致するが、固定式で75度の場合および動揺式の場合には、池野らの提案式よりも大きな波圧が作用する。 4) 段波津波による重複波圧については、起立角度や支持方法による差はあまりなく、平均的には谷本らの式とよく一致する。 5) フラップの浮上・沈降運動に対して、空気充填率の影響が大きく、充填率が大きければ浮上は早く、沈降は遅くなる。また、フラップの周辺条件として側壁がある場合や隣接するフラップとの隙間が狭い場合には、浮上・沈降時間は長くなる。 6) フラップの浮上運動の計算法を誘導した。付加質量慣性モーメントを運動の時間関数として設定することにより、種々の条件下でのフラップの浮上運動をほぼ再現できた。
全文 /PDF/no1155.pdf