研究について

研究成果

鉄筋が腐食したRC部材のひび割れ性状とテンションスティフニング効果

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 046-02-01 2007年06月
執筆者 戴建国,加藤絵万,岩波光保,横田弘
所属 ライフサイクルマネジメント支援センター 特任研究官
要旨 本研究は、鉄筋腐食によりもたらされる鉄筋コンクリート(RC)部材の構造性能の低下を精緻に評価する手法を確立するための研究の一環として、鉄筋腐食により生じる鉄筋-コンクリート間の付着劣化がRC部材のテンションスティフニング効果、およびRC部材のひび割れ性状に及ぼす影響について検討を行ったものである。  鉄筋形状、鉄筋径、拘束筋の有無および電食により鉄筋の腐食程度を変化させたRC部材の一軸引張試験を行い、これらの要因が鉄筋-コンクリート間の付着劣化に及ぼす影響を実験的に把握した。その結果、RC部材中の腐食発生の不均一性が、腐食ひび割れの発生や載荷時のひび割れ分散性、ひいては載荷時に生じる変形の局所化に大きく影響することが分かった。また、鉄筋とコンクリート間の付着劣化がもたらすテンションスティフニング効果の低下は、腐食による鉄筋の断面減少や腐食ひび割れの発生による有効かぶりの減少と比較して、RC部材全体の引張剛性の損失に及ぼす影響は小さいことが推測された。  以上の実験結果をもとに、鉄筋腐食がもたらす鉄筋-コンクリート間の付着劣化とテンションスティフニング効果の関係について、離散ひび割れモデルを用いた解析により定量的評価を試みた。解析結果から、RC部材のテンションスティフニング効果は、鉄筋腐食がもたらす鉄筋-コンクリート間の付着劣化だけでなく、腐食による鉄筋断面積の減少や載荷時のひび割れ発生間隔等、複数の要因に影響されることが分かった。このため、RC部材中に著しい鉄筋腐食が生じた場合を除いて、鉄筋腐食がもたらす付着劣化はテンションスティフニング効果の損失を招く主要因とはならないことが考えられた。さらに、鉄筋腐食が生じたRC部材では、載荷により生じるひび割れの分散性が低下し、ひび割れ幅が局所的に増加することにより、部材の構造性能が低下することが明らかとなった。
全文 /PDF/vol046-no02-01.pdf