研究について

研究成果

スペクトルインバージョンに基づく南西諸島の強震観測地点におけるサイト増幅特性

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1149 2007年03月
執筆者 野津厚、菅野高弘
所属 地盤・構造部 構造振動研究室
要旨  スペクトルインバージョン(岩田・入倉、1986)は、強震記録の得られている地点でのサイト増幅特性を評価するための手法として有用である。しかし、沖縄・奄美地域では、基準観測点に関する不確実性が大きいため、通常のスペクトルインバージョンを適用しただけでは、サイト増幅特性に不確実性が残ることが懸念される。野津・長尾(2005)は本土における強震記録に対してスペクトルインバージョンを適用し、サイト増幅特性の評価を行っているが、上で述べた理由により、沖縄・奄美地域は解析対象外となっている。  そこで、本研究では、基準観測点を設定する必要のないスペクトルインバージョン手法(Moya and Irikura, 2003)を沖縄・奄美地域に適用することにより、強震観測点におけるサイト増幅特性の評価を行った。通常のスペクトルインバージョンでは、特定の観測点におけるサイト増幅特性を既知として与える。これに対し、本研究の方法では、解析対象とする複数の地震に対してあらかじめ震源スペクトルを求めておき、これを拘束条件として与える。その際、震源スペクトルはωスクエアモデルに従うと仮定した。 ωスクエアモデルを規定する二つのパラメタのうち、地震モーメントはF-netによる推定値を用い、コーナー周波数は、互いに震源が近接している大小二つの地震の観測スペクトルの比から推定した。  本研究の成果として、解析対象とした38地震の震源スペクトルと伝播経路の減衰特性を示すQ値、それに17地点におけるサイト増幅特性を評価することができた。ここで算定されたサイト増幅特性は、統計的グリーン関数法により各地の港湾等における強震動を評価しようとする際に活用でき、対象地域における地震災害対策の高度化に資することが期待される。
全文 /PDF/DOC8044_200703114901.pdf