研究について

研究成果

港湾におけるサイト増幅特性を考慮したレベル2地震動の算定事例

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1146 2006年12月
執筆者 野津厚、菅野高弘
所属 地盤・構造部 構造振動研究室
要旨 地震時の地盤の揺れに対してはサイト特性が重要な影響を及ぼすことが知られており、2007年4月に施行予定の新しい「港湾の施設の技術上の基準」では、レベル1とレベル2の2段階の設計地震動は、対象港湾のサイト特性を考慮して設定することが求められる。本稿は、全国の15港湾を対象として、サイト特性を考慮したレベル2地震動の試算を行った結果について報告するものである。まず、各々の港湾においてレベル2対象地震を選定し、選定された地に対して、巨視的震源パラメタおよび微視的震源パラメタを設定した上で、強震波形計算を実施することにより、各港湾におけるレベル2地震動を求めた。強震波形計算は、経験的サイト増幅・位相特性を利用した強震動評価手法(古和田他、1998)を用いて実施した。この手法を適用するためには、対象港湾におけるサイト増幅特性の情報を必要とする。本研究では、既往の研究(野津・長尾、2005)でサイト増幅特性の推定されている港湾ではそれを利用した。また、対象港湾におけるサイト増幅特性が既往の研究で推定されていない場合でも、対象港湾における地震観測記録が利用できる場合には、その記録を利用し、周辺のK-NET等の観測地点におけるサイト増幅特性を補正することにより、対象港湾でのサイト増幅特性を推定した。試算の結果、各港湾の卓越周期等の特性を踏まえたレベル2地震動を実際に設定できることが確認された。表層地盤の非線形挙動を考慮して求めた地表における計測震度は5.0(5強)から6.4(6強)の範囲に分布しており、一口にレベル2地震動と言っても、港湾のサイト特性等に応じてかなりの幅があることがわかる。このことから、港湾施設の耐震設計を過不足無く実施するためには、対象港湾におけるサイト特性を正確に把握することが極めて重要と考えられる。今後は、港湾地域強震観測の一層の活用を図るとともに、港湾地域強震観測でカバーされていない港湾については、短期間(1年~3年程度)の地震観測を行い、サイト特性の把握を行うことが重要であると考えられる。
全文 /PDF/no1146.pdf