研究について

研究成果

メソコスム水槽におけるアマモ地上部の現存量と成長・脱落速度の季節変動

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 045-03-02 2006年09月
執筆者 細川真也、三好英一、内村真之、中村由行
所属 海洋・水工部 特任研究官
要旨  物理条件の制御が可能なメソコスム水槽において、2004年2月から2006年5月まで実海域のアマモ場を想定した実験を行った。既報において、実験水槽における環境条件はアマモの接続的成長を阻害しない事を確認した上で、アマモの生長特性ならびに現存量の季節変化について調査を行った。  アマモの草丈とシュート数の季節変化から、アマモは4月から6月において最も繁茂し、9、10月において最も衰退する事が明らかとなった。シュート数については経年的な増加傾向も確認された。ただし、常に影になりやすい場所におけるシュート密度は移植時からほとんど変化せず、光環境が好条件となりやすい場所のみがシュート数の増加に寄与していた。次に、マーキング法を用いたアマモ地上部の生長調査の結果より、以下の事が明らかとなった。①アマモは葉期間が10日から20日程度の順次開葉型植物である、②葉鞘長は4月に長く、9月に短い、③葉寿命の長さは水温に強く依存する、④伸長する葉身は1、2葉齢のみであり、伸長速度は9月に遅く、4月から5月に早い、⑤葉幅は葉鞘長に依存する、⑥最大葉長までの到達日数は、葉寿命と同様の季節変動を示す、⑦LMA(Leaf Mass per Area)は9月に高くなる、⑧乾燥重量当りの炭素含有量は季節的にほとんど変化しないが、窒素含有量は季節的に変化し、2月の方が9月よりも2倍程度高い。これらの結果からアマモは葉面積と現存量を季節的に調整する事で効率的な純生産を得る戦略を採る事が示唆された。アマモ葉身の生長率と脱落率を求め る事で、両者は季節的に逆の変動を示す事が明らかとなった。
全文 /PDF/vol045-no03-02.pdf