研究について

研究成果

滑動量を要求性能に設定した混成堤の信頼性設計法

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 045-03-01 2006年09月
執筆者 下迫健一郎、大嵜菜々子、中野史丈
所属 海洋・水工部 耐波研究室
要旨  変形量を考慮した防波堤の性能照査型設計法は、種々の条件設定等が複雑なため、実際の設計に適用するには至っていないものの、構造物の重要度やライフサイクルコストを考慮できる精度の高い設計法の一つとして、実務への本格的な導入が期待されている。本研究では、滑動量を考慮した防波堤直立部の性能照査型設計法を、実際の現地の設計に導入することを目的として、種々の検討を行った。  今回の研究における主要な結論は以下のとおりである。 1) 滑動量を考慮した設計法における指標として提案されている期待滑動量、確率波に対する平均滑動量、滑動量の超過確率は、高波の出現特性や水深によってその相関関係が大きく変化する。 2) 複数の滑動量に対して超過確率を設定し、構造物の重要度に応じてその許容値を変える方法を提案した。この方法を用いると、高波の出現特性や水深によって断面を決定する滑動量の条件が異なり、どのような設計条件でもほぼ同じような安全性を有する、精度の高い設計が可能となる。 3) 消波ブロック被覆堤の波力特性を考慮し、波高水深比が大きい場合には、波力の時間変化を三角形パルスのみで表し、さらにその作用時間τ0 については、パラメータとして用いる衝撃砕波力係数α*に上限値を設定して計算する新しい滑動モデルを提案した。 4) 高知港三里地区東第一防波堤を対象として、現行設計法による防波堤断面と滑動量を考慮した性能照査型設計法による断面を比較した試設計を行った。その結果、滑動のみを考慮した場合、現行設計法に比べて堤体幅を約2割小さくできた。また、実際の堤体断面はマウンドの支持力で決まるものの、それでも約14%小さくなった。 5) 一般に、潮位偏差が大きく設計潮位がH.H.W.L.である場合、相対的な滑動安定性が高く、変形を考慮した設計法の導入により建設コストを縮減できる。今後、支持力の安定性に関しても変形を考慮した設計法が確立されれば、さらなるコスト縮減が可能となる。
全文 /PDF/vol045-no03-01.pdf