研究について

研究成果

東京湾口フェリーによる海洋環境の2003~2005 年の観測結果とその特性

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1134 2006年06月
執筆者 鈴木高二朗、竹田晃
所属 海洋・水工部 沿岸環境領域
要旨  東京湾口の海洋環境観測を行うため、2003 年2 月に東京湾フェリー株式会社所有“かなや丸”に流況を計測するADCP を、2003 年12 月に水質・気象を計測する装置を設置し、東京湾口の海洋環境観測を開始した。本資料では、設置開始から2005 年10 月までのデータをとりまとめ、約2 年間の湾口の流況・水質・気象の特性を調べた。その結果、  (1) 表層海水の一日平均のデータから以下のことが分かった。水温は夏季7~8 月にかけて最大で約27℃となり、冬季1~2 月に最小で約12℃である。冬季は黒潮系暖水の影響で1~2 週間周期で約5℃ほど大きく変動している。塩分は冬季34PSU 前後と高く、降雨の多い8~10 月にかけて低下し、最小で25PSU であった。σt は冬季に最大で降雨量の多い秋期に最小値をとる。12 月~2 月の黒潮系暖水流入時には塩分水温が大きく変動していたのに対し、σt の変化は小さかった。クロロフィルaは冬季に小さく最大で10μg/l程度である。一方、6~9 月にかけては大きく54μg/lまで上昇した。  (2) 冬季黒潮系暖水流入前後の残差流を見ると、流入前に強い流出があり、その後強い流入が見られ、さらに黒潮系暖水流出時には強い流出を伴っていた。周期性の強かった2004 年1 月の表層塩分と残差流成分に対してスペクトルをとると、強いスペクトルが金谷側に見られており、7.1 日と21.3日が特に強くなっていた。周期的な変化は、冬だけでなく夏季、秋期にも見られた。  (3) 多摩川流量と湾口塩分との相互相関をとると、湾口での塩分低下は多摩川の流量のピークから約2~3 日後に最大となった。  (4) 赤池ベイズ型情報量基準(ABIC)で推定された残差流から海水交流量を推定した。1 ヶ月平均をとった海水交流量でみると秋に最も海水交換が盛んで、東京湾内水容量を交流量で除した見かけの滞留時間は17~19 日程度であった。冬場は海水交換が小さく見かけの滞留時間は23~27 日だった。  高知 H1/3=9.95m, T1/3=13.0s, 8月 8日16時      (波浪観測年報掲載は1996年以降)  上川口 H1/3=6.20m, T1/3=11.5s, 8月 8日14時      (波浪観測年報掲載は1996年以降)  1997年より、切れ目のない連続観測によって、沖合の長周期波観測を実施しているが、2003年には、全国30観測地点で長周期波解析を実施した。また、周期帯表示に伴うスペクトルの出現統計解析を、データ収集・処理方式が特殊な境港を除く全国54観測地点で実施した。
全文 /PDF/no1134.pdf