研究について

研究成果

セメント安定処理土の耐久性に関する室内試験

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1128 2006年06月
執筆者 中村健、北詰昌樹
所属 地盤・構造部 地盤改良研究室
要旨  わが国は、これまで地盤安定対策、沈下対策または液状化対策など種々の目的で深層混合処理工法に代表される数多くのセメントおよびセメント系固化材を用いた地盤改良技術が開発されてきている。近年、セメント安定処理土は優れた遮水性と強固な特性を生かして、建設廃棄物や産業廃棄物の処分場の遮水構造にも適用されてきている。しかし、強固な改良地盤であっても地下水や周辺の地盤に暴露されることによって、表面から徐々に劣化し、強度や遮水性が低下することが指摘されている。これらの劣化が進めば、処分場の遮水構造としての機能が満足できなくなるとともに、最悪の場合には構造的安定性も失う危険性がある。  セメント安定処理土の力学的特性は詳細に調べられてきている。しかし、長期間にわたる耐久性に関する研究は限られている。これまでの研究では、安定処理土の長期安定性が確保されたという報告がある一方で、暴露条件によっては安定処理土表面から劣化が進むとする報告もある。そのため、安全で確実な構造物の建設のためには、劣化状況や劣化の進行状況などの長期耐久性に関するデータの蓄積が強く望まれている。  そこで本研究では、セメント安定処理土の長期耐久性に及ぼす配合条件ならびに暴露条件の影響を実験的に検討した。実験では、比較的低強度のセメント安定処理土を真水、海水および未改良の粘土地盤に暴露させ、長期間にわたる強度変化とカルシウム量の変化を調査した。  その結果、真水、海水、未処理の粘土地盤の暴露条件でも暴露期間が半年以上経過すると強度の低下現象が見られた。本研究の結果より30 年後の強度低下の範囲を外捜すると。管中混合固化処理工法のような比較的低強度の処理土の場合には数cm~10 数cm 程度、深層混合処理工法のような高強度の処理土の場合には数cm 程度と予想される。いずれの場合も、造成される改良地盤の大きさが大きい場合には強度低下の範囲はごく小さく、構造・機能の面で直ちに問題視する必要性は低いと考えられる。
全文 /PDF/no1128.pdf