研究について

研究成果

鋼材における電着および電気防食併用工法の防食性能に関する実験的検討

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1113 2005年12月
執筆者 浜田秀則、兼坂薫、鈴木靖庸、宮田義一
所属 地盤・構造部 材料研究室
要旨 港湾鋼構造物の海中部における腐食対策として一般的に電気防食法が適用されている。港湾鋼構造物へ電気防食法を適用した場合、副生成物として鋼材表面上に電着被膜が析出し、電気防食における所要防食電流密度が低減される効果が確認されている。また、最近ではこの電着被膜を外部電源により強制的に生成させ、電着被膜により防食を図る工法が、“電着工法”として既に開発されている。この電着工法により最大限の防食効果を得るためには、電着被膜を一定の厚膜とする必要があるため施工期間が長期化すること、電着被膜が剥離した場合に自己修復効果がないこと等から、広く適用されるには至っていない。そこで港湾鋼構造物の新しい防食法の試みとして、電着と電気防食を併用して適用することを考えた。本研究では、「初期に外部電源により電着被膜を生成させ、その後電気防食を適用する併用工法」の防食効果を把握するための一連の実験的検討を行った。得られた結果の概要を以下に示す。 (1)室内試験結果より電気防食の必要電流密度を低減させるために必要な電着被膜の必要最小膜厚は約100μmであることがわかった。また、電気防食における所要防食電流密度は通常の電気防食法と比較して最大で95%も低減可能であることがわかった。 (2)海水循環水槽による実環境模擬試験結果より、各環境での所要防食電流密度は、電気防食法と比較して、H。W。L。では約80%、H。W。L。以深では最大で95%低減可能であることが確認された。また;電着被膜を生成させることで電気防食法単独では適用が難しいとされている干満帯上部への適用の可能性も確認された。 (3)鋼管杭の海中部を対象とした試験施工より、施工5ヶ月後の調査では外観上腐食は認められず、電位も防食電位を満たしていることから良好な防食状態であることが確認された。また、電気防食における所要防食電流密度が大幅に低減されることが推定され、実環境においても電着法と電気防食法の併用工法の有効性が確認された。
全文 /PDF/no1113.pdf