研究について

研究成果

スペクトルインバージョンに基づく全国の港湾等の強震観測地点におけるサイト増幅特性

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1112 2005年12月
執筆者 野津厚、長尾毅
所属 地盤・構造部 構造振動研究室
要旨 全国の港湾等における強震動評価の精度向上に資することを目的として、スペクトルインバージョンを我が国の各地方に適用し、サイト増幅特性の評価を実施した。スペクトルインバージョン(岩田・入倉、1986)は、複数の地点で取得された複数の地震による強震記録に対して一種の回帰分析を適用し、震源スペクトルやサイト増幅特性を推定するための手法である。本研究では、港湾地域強震観測の強震記録にK-NET、KiK-net等の強震記録を加えたデータセットに対して本手法を適用し、各地点におけるサイト増幅特性を評価した。その際、基準観測点の選定に関して新たなクライテリアを設けた。解析は九州 中国・四国、近畿、中部、関東、東北・北海道の6つの地域で実施した。対象周波数は、一般的な港湾構造物の振動特性や強震記録の精度を考慮し、0。2-10Hzとした。  本研究の成果として、港湾を始めとする各地の強震観測地点でのサイト増幅特性を推定することができた。また、解析の副産物として得られた震源スペクトルから対象地震の地震モーメントを算定したところ、F-netのCMT解と概ね調和する結果となった。このことから、採用した基準観測点の選定方法は概ね妥当なものであると考えられる。サイト増幅特性が比較的大きな値となった一部の観測地点については、算定されたサイト増幅特性を用いた強震動シミュレーションを実施し、観測記録との比較を実施することにより、サイト増幅特性が妥当なものであることを確認した。ここで算定されたサイト増幅特性は、統計的グリーン関数法により各地の港湾等における強震動を評価する際に活用することができる。また、空港など、これまで強震観測が実施されていない地点においても、今後、短期間でも強震観測を実施することにより、本研究でサイト増幅特性の推定されている地点とのスペクトル比をとることなどにより、サイト増幅特性を推定することも可能である。
全文 /PDF/no1112.pdf