研究について

研究成果

2004年東海道沖地震津波の観測結果

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1096 2005年06月
執筆者 永井紀彦、里見茂
所属 海洋・水工部 海象情報研究室
要旨 2004 年9月5日23:57 に東海道沖地震が発生し、東海から四国に至る太平洋沿岸域で津波が観測された。本稿は、2004 年東海道沖地震津波の観測結果を紹介したものである。  沿岸での津波は、銚子から油津にかけての広範な太平洋沿岸検潮所で観測されたが、その津波波形特性は、検潮所毎に大きく異なっていた。室津港、潮岬、および御前崎では、沖合における津浪波形記録と港内の記録を比較することができた。特に、室津港では、ナウファスの一環として設置されている水深27mの超音波式波高計、流速計型波向計による観測記録と、沖合水深100mに設置されているGPS津波計との、波形記録が観測されており、室戸岬漁港内の気象庁検潮所の潮位変動記録とあわせて、沖から岸への津波の伝播・変形状況を捉えることができた。この結果、沖合では港内よりも8~10 分程度早く津波の波形を捉えていたことが明らかにされた。また、3観測点の津波の周波数スペクトルを比較した結果、沖合から港内への津浪波形の増幅特性を明らかにすることができ、室戸岬漁港内においては、周期8分程度の海面変動が増幅されやすい共振周期となっていることが示された。津波による流れの検出に関しても検討し、海底設置式のナウファス波浪計は、津波による流速変動を捉えたことが示された。ただし、GPSブイでは、常時の係留系の固有周期による水平回転運動が大きいため、今回の津波に伴う流速変動は検出できなかった。  沖合いにおける津波波形を観測するためには、従来のデータ収集システムでは不十分であり、切れ目のない連続的なデータ収集と、長周期波の特性に応じた観測データの処理解析が必要となる。1993 年の北海道南西沖地震津波を契機として、ナウファスでも切れ目のない連続的なデータ収集システムが構築されることとなった。こうしたシステムの実現運用によって、沖合津波波形記録の収集解析が可能になり、沿岸に来襲する津波の特性解明に大きく貢献できるようになった。さらに、より早く沖合の津波を検知することができるシステムとして、GPS津波計を開発実用化し、2004年4月以降、室戸岬沖13km の水深100m地点に実用化されたGPS津波計が配置され、大水深海域での津波や高波のリアルタイム監視開始された。本津波の実態把握にあたっては、こうした、ナウファスの改良やGPS津波計が、重要な役割を担った。
全文 /PDF/no1096.pdf