研究について

研究成果

拡張対数則を導入した干出・冠水スキームの開発と3次元σ座標海洋モデルへの適用

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 043-04 2004年12月
執筆者 内山雄介
所属 海洋・水工部 漂砂研究室
要旨  3次元σ座標系海洋流動モデル(POM;Blumberg and Mellor,1983)に適用可能な千出・冠水スキーム(WDS)を開発した。WDSでは、拡張対数則を新たに導入することにより、千出域を含む潮間帯において水深が極めて浅くなった場合でも底面境界層周辺の流速場を正確に再現することが可能となっている。このWDSはシンプルな形で定式化されているが、領域全体の質量保存と計算上のロバストネスを選択的に確保することができるようにモデリングされている。開発された3次元モデル(WD-POM)再現性を確認するため、計算結果をCarrier and Greenspan(1958)による非線形長波の斜面遡上問題に対する理論解と比較したところ、両者は良好に一致した。次いで、広大な潮間帯を有する内湾海域である米国サンフランシスコ湾の潮流計算にWD-POMを適用したところ、モデルによる潮位変動と潮流速変動がNOS-NOAA(2003)による観測結果とほぼ完全に一致したことから、WD-POMが潮間帯を含む内湾域の流動を忠実に再現することが可能であることが確認された。  潮間帯の存在が内湾流動におよぼす影響を照査するため、サンフランシスコ湾の地形に対してWDSを適用した場合としない場合の計算を実施し、両者の結果を比較した。潮間帯の存在は湾内における潮汐波の伝播と沿岸部における潮汐残差流の形成に対して重大な影響を及ぼしていることが実証された。すなわち、ケルビン波として湾内を反時計回りに伝播する潮汐波は、潮間帯上の斜面を遡上する際に屈折変形を受けて等深線に垂直な流速成分を生じると同時に、浅水変形により潮位変動振幅が増大し、逆に底面摩擦の影響が相対的に大きくなるため潮汐波伝播の位相が遅れることなどが明らかとなった。
全文 /PDF/vol043-no04.pdf