研究について

研究成果

塩害環境下に15年間暴露されたコンクリートの耐久性および表面被覆材による塩害防止効果

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 043-02-03 2004年06月
執筆者 山路徹、小牟禮建一、浜田秀則
所属 地盤・構造部 主任研究官
要旨  昭和50年代後半に那覇港の臨港道路に施工されたプレストレストコンクリート橋は、海上に位置し、厳しい塩害環境であるにもかかわらず、その設計・施工が道路橋の塩害対策に関する指針が改訂される前であったため、かぶりが3.5cm で施工されていた。そのため、塩害対策としてコンクリートに表面被覆を実施することが決定された。しかしながら、当時表面被覆材の選定基準などは明確ではなかったため、選定の際の基礎資料を収集することを目的として、コンクリート表面に異なる6種類の表面被覆を施した試験体の暴露試験が那覇港において1987年に開始された。本論文は、試験体暴露開始後15年時において、これらの表面被覆材の塩害防止効果を評価するため、被覆材外観、付着性、ひび割れ追従性、遮塩性等に関する各種試験を行い、その結果をまとめたものである。また、被覆を行っていないコンクリート試験体も現地に暴露し、コンクリートの耐久性に及ぼす水セメント比、鉄筋かぶりおよび暴露環境の影響に関する検討も行った。以上の検討より得られた知見を以下に示す。  表面被覆を行っていないコンクリート試験体の場合、コンクリート中への塩化物イオンの浸透および鉄筋の腐食を抑制するためには、コンクリートの水セメント比を低減させることおよびかぶり厚さを増加させることが非常に有効であることが確認された。また、水セメント比や暴露環境等の違いによりコンクリートの酸素拡散性状が異なった場合、鉄筋の腐食速度は異なり、鉄筋表面における酸素供給量と鉄筋の腐食速度の間には良い相関が認められた。すなわち、コンクリートの酸素拡散性状を考慮することで、鉄筋の腐食速度が推定される可能性が示された。  表面被覆を行ったコンクリート試験体の場合、表面被覆材の劣化状況は、その仕様によって大きく異なっていた。また、被覆材の付着性については、15 年後においても顕著な低下は見られなかった。しかしながら、表面に劣化が見られた被覆材においても、コンクリート中への塩化物イオンの浸透はほとんど無く、その結果として、コンクリート中の鉄筋は15 年後においても腐食していなかった。以上のことから、塩化物イオンが浸透していない段階において、コンクリートに適切な表面被覆を行うことは塩害対策として非常に有効であり、今回のような条件においては、15年間の長期においても塩害防止効果が十分に維持されることが確認された。
全文 /PDF/vol043-no02-03.pdf