研究について

研究成果

難視界時の把持作業における触覚を用いた遠隔操作支援手法

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 042-04-01 2003年12月
執筆者 内海真、酒井浩、秋園純一
所属 施工・制御技術部 制御技術研究室
要旨  水中では、濁りにより視覚情報が乏しくTVカメラによる遠隔操作を行えない。このことが、遠隔操作式水中施工機械導入の障害となっている。この濁りに対応した把持機能を持つ遠隔操作式施工機械を水中施工に導入することで、不要なブロックの撤去や建造物の解体作業等の機械化が期待できる。把持作業を行うには、把持対象物の位置や形状、作業状況などの情報が必要である。通常これらは視覚で得ている情報であるが、濁りにより視覚が損なわれるため、TVカメラ以外の方法でこれらの情報を取得し、操縦者に提示する必要がある。  こうした問題に対して、著者らは、欠損した視覚情報の代わりに触覚情報を用いた手探りにより把持作業を行う方法を考案した。視覚補完手法として、指の接触をCG把持装置の描画色の変化で表す接触の視覚化、対象物との接触点の座標から対象物形状を描画する触像の視覚化、接触や把持の感覚を操作装置により繰縦者に伝達するパイラテラル制御を用いる。これは、触覚を利用した手探りによる把持であるため、対象物を不用意に移動させてしまうことがある。そこで、対象物との接触時に把持装置の動作を停止するUIMD(UnIntentional Moving Deterrence)制御を加える。こうした視覚補完手法とUIMD制御を組み合わせ難視界に対応した操作支援を行う。  この操作支援を3指把持装置模型と、把持装置と相似形構造の操作装置、装置の姿勢や視覚化した触像を提示するVRモニタから成る把持システム模型に適用した。この把持システム模型を用いて、把持装置を対象物に接触させる接触実験を行い、UIMD制御により対象物の不用意な移動を抑えられることを確認した。さらに、分散配置したコンクリート塊と集積配置した小型ブロックを対象に、触覚を用いた操作支援による把持作業と目視による把持作業を行い、作業時間や成功率等を比較した。実験の結果、目視と比較すると作業時間が掛かるが、把持作業自体は100%近く遂行できることが分かり、本操作支援の有効性が明らかとなった。
全文 /PDF/vol042-no04-01.pdf