研究について

研究成果

波群の変形による長周期の波と流れの発生および沿岸の長周期波に伴う浜への波の遡上を考慮した地形変化モデルの構築

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1062 2003年09月
執筆者 中村聡志
所属 海洋・水工部 底質環境研究室
要旨  近年、海岸防護や海岸環境、海岸利用の面から砂浜や干潟を保全しあるいは造成し、管理する必要が生じている。しかしながら、地形や構造物などによって生じるその場所に固有な波や流れによる底質移動の結果として動的に安定な形状を保っている砂浜や干潟の地形変化を予測する実用的なモデルは開発されていない。これら海岸地形変化予測を行うには、波の回折・反射、屈折、浅水、砕波変形を精度よく計算するのみならず、波高の時間的変動(波群性)を有する波の変形よって励起される長周期の流れおよび平均水位の変動によって生じる浜への越流や波の遡上を考慮した地形変化の計算を広領域・高解像度・短時間で行うことが必要となる。  本研究では、沿岸域の地形と構造物による境界条件のもとでの波・流れ・地形などの物理環境変化の予測・管理に供する数値計算ツールの開発を目的とし、波群の変形による長周期の波と流れの発生モデルと平均水位の長周期変動に伴う波の遡上を考慮した流動モデルを開発した。また、既存の掃流砂や浮遊砂による地形変化モデルを組み合わせることにより、長周期波の遡上流れと波による地形変化予測数値計算の枠組みを構築した。  理論値および既存の実験結果、現地観測結果を用いてモデルの検証を行い、波および平均水位変動、沿岸流、波の遡上について良好な結果を得た。また、仙台南海岸で生じた遡上波が浜の頂を越え、蒲生干潟内への越流と砂の堆積をもたらした事例を対象として波の遡上の再現計算を行い、越流が発生した際の波浪条件による越流位置の計算結果が実際の越流発生位置にほぼ一致することを示した。
全文 /PDF/no1062.pdf