研究について

研究成果

大規模可動式高潮防潮堤に関する基礎的研究-フラップゲートの水理特性と試設計-

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1060 2003年09月
執筆者 富田孝史、下迫健一郎、山田昌郎、横田弘
所属 海洋・水工部 高潮津波研究室
要旨  地球温暖化による海面水位の上昇が危惧されている。海面水位が上昇すれば、内湾沿岸域における高潮や高波による浸水の危険度が増大することは避けられない。本研究では、今後の海面水位上昇に対応できる新しい高潮防護対策として、港湾の入り口を高潮時に可動式高潮防潮堤によって締め切る対策について検討した。港湾の入り口に設置するため、背後の陸域および海域を同時に防護することができるという長所がある。しかし、平常時の船舶航行や海水交換に支障になってならず、さらに開口部の途中に支柱等の船舶航行に支障になるような障害物を設置しない構造形式である必要があるため、本研究ではこの条件を満足する一形式として、フラップゲートを取り上げている。  水理模型実験を行って、フラップゲートの波高伝達率と作用波力を明らかにしている。直立あるいは港内側に傾斜するゲートに作用する波力は、防波堤などの波圧を算定する合田式で計算した波力によって算定可能であるが、港外側に傾斜するゲートの場合には合田式による計算値よりも2割から4割程度大きな波力が作用することが判明した。また、波高伝達率は、静水面上のゲート天端高が入射波高以上の高さであれば、ゲートの傾斜方向による波高伝達率の差異は小さくなることが判明した。  また、フラップゲートの水理特性を数値計算によって検討できるように、数値波動水路CADMAS-SURFを改良した。波高伝達率や作用波力について水理模型実験結果と比較したところ、良好な結果が得られた。  フラップゲートに水理特性に基づいて、直立するゲートについて試設計を行って構造の検討を行っている。我が国の内湾におけるような高潮や高波の条件に対して、フラップゲートが構造的に実現可能であることが明らかになっている。さらに、この場合のコストの試算を行っている。
全文 /PDF/no1060.pdf