研究について

研究成果

超音波を利用した水中座標計測技術の開発

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1059 2003年09月
執筆者 白井一洋
所属 施工・制御技術部 主任研究官
要旨  港湾工事の水中部施工は、施工の効率化、安全性の向上のため人力施工から機械化施工に移行しつつあり、近年、水中施工機械の遠隔操作やロボット化の研究が進められている。水中での測位技術は施工機械の施工精度に直接影響する重要な要素技術であるが、既存の水中測位技術は、広範囲を移動する潜水艇やROV等の測位を目的に造られたため、水中施工機械の施工精度を満足できるような精度の技術は現状では存在しない。本研究では、台船から半径20m以内で水中工事を行う水中施工機械の位置を、±10cm以下の精度で測位する水中測位技術の開発を行った。測位システムは3個のレスポンダと4個の受波器からなるSBL方式で、従来の水中測位の主な誤差要因である、超音波の伝搬時間と伝搬速度の測定誤差を排除することにより高精度測位を達成した。伝搬時間の測定精度を向上させるため、M系列信号で位相変調したPSK信号を超音波に使用し、相関法により伝搬時間を測定した。超音波の伝搬速度は受波器を4個使用することにより、移動体の座標値と超音波の伝搬速度を未知数として、連立方程式の解として求めた。これにより、測位の度に伝搬経路全体の平均音速を得ることができる。  本研究では、シミュレーションと小規模な水槽実験により以下の結果を得た。 1)M系列信号で変調したPSK信号の相関法による測定値には以下の誤差が含まれる。  -2T<誤差<T T:AD変換器のサンプリングタイム 2)本システムは測位対象物が水深20mで、超音波の伝搬時間を1μsecまで計測できる場合、±10cmの測位精度を維持するためにはベースライン長5.9m以上が必要である。 3)伝搬時間測定誤差が、4個の受波器で計測した伝搬時間に同程度含まれていると、測位精度には影響を与えない。 4)測位対象物の移動で生じるドップラー効果による測位精度への影響は、ROVや水中バックホー等の移動速度では現れない。
全文 /PDF/no1059.pdf