研究について

研究成果

模型実験による臨海都市部の津波氾濫のリスク評価

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 042-03-05 2003年09月
執筆者 安田誠宏、平石哲也
所属 海洋・水工部 波浪研究室
要旨  平成11年の福岡水害、平成12年の東海豪雨水害などに代表されるように、近年は都市型水害が多発している。その際、地上での被害ばかりでなく、水防対策の不備により、地下施設において多大な人的・資産的被害が発生した。一方、都市臨海部においては、土地利用の高度化や地下空間の利用拡大といった高度利用が促進される反乱伊勢湾台風を契機に整備されてきた海岸保全施設の老朽化、異常潮位や温暖化による海面上昇など、外力条件が厳しくなり、大きなリスクが生じつつある。平成11年に発生した台風9918号に伴う高潮により、宇部市や広島市の軸地では、地下室や低地家屋への浸水被害が発生し、都市機能は麻痺した。このように被災リスクが高い、高度に開発された臨海都市部が直面している高軋高波、津波による氾濫・浸水の危険度を適切に評価し、防災レベルに応じた防災施策を提案する必要性は非常に高い。  そこで本研究では、都市臨海部の浸水リスクを適切に評価するために、地上と地下施設を再現したモデル臨海都市における氾濫・浸水実験を実施した。臨海部で起こりうる浸水災害の外力として、津波を検討対象に選んだ。1923年の関東地震を想定し、東京湾内に来襲する津波の計算を行った。起こりうる地震断層位置における津波のうち、東京湾内に発生する水位変動が最も厳しいものを実験の外力条件として与えた。  複雑な地形における氾濫水の挙動特性や地下での浸水深、進入速度などを計測し、浸水リスクの評価を行った。その結果、津波により市街地が氾濫すると、たとえ浸水深が小さくとも、人に与える危険度は非常に大きいことを明らかにした。また、地下空間における浸水深は深く、人の転倒限界を超える流速が発生するため、時間が経っと避難は困難になることが明らかになった。さらに、離岸距離と浸水範囲の関係を求め、地下施設の位置によるリスクの違いを明らかにした。
全文 /PDF/vol042-no03-05.pdf