研究について

研究成果

台風による内湾の波浪・高潮の双方向結合推算モデルの構築

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 042-03-04 2003年09月
執筆者 河合弘泰、川口浩二、橋本典明
所属 海洋・水工部 主任研究官
要旨  これまで一般的に波浪推算と高潮推算はそれぞれ独立して行われてきたが、このような方法でも実務で大きな支障が生じることは少なかった。ところが、台風9918号による周防灘部の波浪と高潮を十分に再射ることはできなかった。その原因の一つは海上風の過小評価であるが、その他にも波浪・高潮の相互作用を考慮していないことが考えられる。  そこで本研究では、気圧分布の歪みやスーパー・グラディエントウインド(SGW)を考慮した海上風を用い、波浪推算と高潮推算の間で必要な変数を双方向にやりとりをしながら両方の推算を同時に進めていくことのできる、新たな推算モデルを構築した。このモデルにおいて、波浪推算にはWAMCyCle4を用い、高潮推算で得られた非定常な水位と流れを波の発達や屈折に考慮できるようにした。また逆に、高潮推算には非線形長波近似に基づくモデルを用い、波浪推算で得られた海面抵抗係数を導入し、天文潮も合わせて計算できるようにした。  次に、この新たに構築した推算モデルを用いて、台風9918号による周防灘と八代海の波浪と高潮を追算した。その結果、波浪や高潮の推算には、まずこれらの外力となる海上風の推算が重要であり、気圧分布の歪みやSGWを考慮して海上風を推算する必要のあることが分かった。また、水深の浅いところでは高潮や天文潮による水位の変化や流れによって波浪が変化し、高潮の原因として吹き寄せの効果の卓越する湾奥では波浪による海面抵抗の変化によって高潮偏差も変化することが明らかになった。したがって、内湾の波浪と高潮の推算では、波浪・高潮の相互作用も考慮する必要がある。以上のような方法を用いることによって、従来方法では過小評価されていた周防灘西部でも、観測値に近い波浪や高潮が得られた。
全文 /PDF/vol042-no03-04.pdf