研究について

研究成果

羽田空港の地震動特性に関する研究(第2報)スペクトルインバージョンによるサイト特性

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 042-02-10 2003年06月
執筆者 野津厚、佐藤陽子、菅野高弘
所属 地盤・構造部 主任研究官
要旨 羽田空港では沖合展開以後地震観測を継続的に実施しており記録の蓄積が進んでいる。それらの記録から空港施設の耐震設計に役立つ情報を抽出することを念頭において一連の研究を実施している。前報ではアレー観測の記録にF-K解析を適用して、表面波の特性、特に位相速度と周期の関係を調べた。しかし、地震時の地盤のひずみを評価するためには、位相速度に加え、地震動の振幅を周期の関数として評価することが必要である。そこで、本報ではスペクトルインバージョン手法を適用し、当該空港のサイト特性、すなわちフーリエ振幅スペクトルの地震基盤に対する増幅率を明らかにすることを試みた。インバージョンには、羽田空港で得られた記録に加え、港湾地域強震観測やK-NETなど、関東地方の他の地点で得られた記録を用いた。使用した記録は122の観測点で得られた31の地震による1384の記録である(2768成分)。推定した未知数は31の地震による震源スペクトルと122の観測点のサイト特性、それに伝播経路のQ値の併せて154である。スペクトルインバージョンでは基準観測点(サイト特性がすべての周波数に対して1であるような観測点)を与える必要がある。ここでは試行錯誤によりK-NETのTKYOO2(桧原)を基準観測点とした。本研究で得られた羽田空港のNo.1-No.8地点のサイト特性は、概ね0.2Hz以下では共通であるが、それ以上では地点毎にかなり相違のあることがわかった。工学的基盤の深い観測点のグループ(No.1-4、No.7)では、周波数0.3-1.OHzの範囲でサイト特性は10を上回るかなり大きな値を示す。この値は関東地方の他のどの観測地点と比較しても大きいものであった。それに対して、工学的基盤の浅い観測点のグループ(No.5、6、8)では、サイト特性のピークはより高周波数側に移動し、そのピークの高さは10程度である。ここで得た結果はシナリオ地震による強震動の予測に活用することができる。特に、震源位置の関係で経験的グリーン関数法を適用できないような場合には、本研究で得られたサイト特性を統計的グリーン関数法と組み合わせて用いることにより、地表での揺れを大略評価することができる。
全文 /PDF/vol042-no02-10.pdf