研究について

研究成果

スラグセメントを用いたコンクリートの海洋環境下における長期耐久性

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 042-02-07 2003年06月
執筆者 Tarek Uddin MOHAMMED、浜田秀則、山路徹
所属 地盤・構造部 材料研究チーム
要旨  多くの海洋コンクリート構造物において、海水中の塩化物イオンがもとで生じる鉄筋腐食による早期劣化が発生している。塩化物イオンの浸透をどのように抑制するかは、構造物の長期耐久性を実現するための重要な課題である。各種の比較的短期間の実環境暴露試験や促進試験の結果から、スラグセメントを使用したコンクリートにおいては普通ポルトランドセメントを使用したコンクリートに比べて塩化物イオンの浸透が抑制されていることが明らかになっている。この抑制効果の長期的挙動を把握するために、3種の異なるシリーズの、スラグセメントを用いたコンクリートの長期暴露試験を港空研構内の海水循環水槽において実施した。これらのシリーズの暴露期間が各々30年、15年、10年に達したことから、供試体の評価試験を実施した。コンクリートの外観性状、圧縮強度、中性化深さ、含水率、コンクリートの電気抵抗、塩化物イオン含有量(全塩化物・可溶性塩化物)、細孔構造、鉱物組成、埋設鉄筋の腐食状況、鉄筋-コンクリート界面の観察、を実施し、普通ポルトランドセメントコンクリートとの比較を行った。これらの一連の実験の結果を本文では取りまとめる。本文において述べられている結果は、海洋環境下におけるコンクリートの長期耐久性を考察する上で貴重な資料となるものである。  長期間の暴露を経た供試体の試験結果では、スラグセメントを使用することによるマイナス面の効果は皆無であった。普通ポルトランドセメントを使用したコンクリートに比べて、スラグセメントコンクリートの方が長期的な強度の増進を示した。スラグセメントコンクリートの供試体の表層部は、長期間の暴露後に密実になる傾向を示し、それにより塩化物イオンが表層部で遮へいされていた。また、内部鉄筋の腐食もスラグセメントコンクリートの方が軽微であった。また、スラグセメントの方が緻密な細孔構造を示すと同時に、鉄筋-コンクリート界面構造も緻密であった。これより。スラグセメントコンクリートの方が長期耐久性に優れるものと判断された。  また、上記の結果に加え、鉄筋-コンクリート界面に空隙が存在すると塩化物イオン濃度がかなり低くても鉄筋の腐食が開始されることから、海洋コンクリート構造物の長期耐久性を向上させるためには、鉄筋-コンクリート界面の構造を改善することが極めて重要であることが明らかとなった。
全文 /PDF/vol042-no02-07.pdf