研究について

研究成果

時間発展型擬似段波モデルに基づく砕波モデルの開発

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 042-02-02 2003年06月
執筆者 平山克也、原信彦
所属 海洋・水工部 主任研究官
要旨  水面の運動学的境界条件を満足するブシネスク方程式によって砕波現象のメカニズムを直接記述することは不可能である。一方、実務において実施される波浪変形計算では、砕波現象自体を解析することよりもむしろ、砕波が周辺の波・流れ場に与える影響を定量化することが重要である。そこで、浅海域における波浪変形計算に多用されるブジネスクモデルにおいて砕波の有無を判定し、砕波によるエネルギー減衰の効果を計算結果に反映させることを目的とした砕波モデルがいくつか提案されている。しかし、これらの砕波モデルは波速、波向やそれらに対応した海底勾配、あるいは経験的に設定される不確定値などを必要とするため、その適用範囲は対象とした砕波変形に限られることが多い。そこで本研究では、砕波減衰量を調整する不確定なパラメータを必要としない客観的な1次元砕波モデルを開発した。  新たな砕波モデルでは、鉛直方向圧力勾配を用いた砕波判定法によって、進行波と部分重複波の砕波を統一的に判定することを試みた。また、砕波によるエネルギー減衰に関しては、跳水によるエネルギー逸散量が解析的に得られることを利用して、進行波と部分重複波の砕波による波エネルギー減衰を客観的に定量化することを試みた。断面水路における砕波実験を対象として、それらの再現計算を実施したところ、新たな砕波モデルは、1次元伝播計算において、砕波位置での水位変動や流速変動、および砕波帯周辺の波高分布や平均水位分布などを精度良く再現することが確認された。また、不規則波の砕波波高は、合田の砕波による波高分布モデルと良く一致した。  一方、合田(2002)による段階的砕波モデルに比べ本砕波モデルは、深海域や勾配が非常に緩やな斜面上での砕波判定が不十分であることが判明した。そこで、本砕波モデルに対し補助的に山田・塩谷(1968)の砕波限界曲線による砕波判定を導入したところ、勾配1/10~1/100の一様斜面上の砕波変形を精度良く再現することが確認された。しかしながら、バー・トラフ地形の逆勾配斜面上で見られる波減衰を定量的に表現するまでには至らなかった。
全文 /PDF/vol042-no02-02.pdf