研究について

研究成果

鉄筋とコンクリート間の付着性能に及ぼす鉄筋腐食の影響

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1044 2003年03月
執筆者 加藤絵万、岩波光保、横田弘、伊藤始、佐藤文則
所属 地盤・構造部 構造強度研究室
要旨  海洋環境下に構築される鉄筋コンクリート構造物において最も重大かつ重要な劣化原因は、コンクリート中の鉄筋腐食である。コンクリート中の鉄筋において腐食が開始すると、腐食生成物の膨張によりコンクリートにひび割れが生じ、やがてかぶりコンクリートの剥落にまで至る。このような材料劣化の進行に応じて、構造物の耐荷性、変形性といった構造性能は低下する。しかし、鉄筋腐食程度と構造性能の低下の関係については未だ定量的な評価はなされておらず、目視観察結果に基づいた定性的かつ主観的な情報により、構造性能が間接的に判断されているのが現状である。  本研究では、構造性能の低下をより精緻に評価する手法を確立するための研究の一環として、筋の腐食程度と単純引張応力下における鉄筋とコンクリート間の付着劣化の関係について実験的検討を行った。特に、鉄筋腐食程度とそれによる付着劣化が鉄筋コンクリート部材のテンションスティフニング効果、およびひび割れ分散性に及ぼす影響について考察した。その結果、鉄筋腐食により付着性能が低下した場合、テンションスティフニング効果が失われ、ひび割れ分散性が低下することが確認された。また、その低下程度は鉄筋の断面減少率に大きく依存することが分かった。さらに、これらの実験結果を基に、腐食による鉄筋の断面減少の影響と付着性能の低下を表現するために、鉄筋要素の断面積および付着要素のせん断ひずみ-せん断応力関係を変化させた非線形有限要素解析を行った。その結果により、鉄筋とコンリート間の付着性能の定量的表現方法を提案した。
全文 /PDF/no1044.pdf