研究について

研究成果

半経験的な強震動予測手法の改良に関する提案

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 042-01-03 2003年03月
執筆者 野津厚、深澤清尊、佐藤陽子、菅野高弘
所属 地盤・構造部 主任研究官
要旨  従来より強震動予測の分野で用いられてきた経験的グリーン関数法に対し、大地震の滑り速度時間関数をより適切にモデル化できるようにすることと、媒質の非線形挙動の影響をより適切に反映できるようにすることの二点を念頭において改良を試みた。  経験的グリーン関数法に用いる滑り速度時間関数の補正関数については、従来のもの(入倉他、1997)をより一般化した式を提案した。提案式は、振幅スペクトルの1/T(Hz)での落ち込み防止という入倉他(1997)の補正関数の利点をそのまま引き継いでいるだけでなく、大地震の滑り始めの急激さを表現するバラメタαを含むので、動力学モデルヘのフイッテイングという点ではより好都合である。提案式から計算される大地震の滑り速度時間関数を中村・宮武(2000)の滑り速度時間関数にフイッテイングさせることを試みたところ、αの最適値は断層幅W、fmaxおよび大地震と小地震の立ち上がり時間の比Nの影響を受けることがわかった。ただし、いずれのケースにおいても、αの最適値は0.51~1.58の範囲に収まった。  一方、媒質の非線形挙動の取り扱いについては、経験的グリーン関数法において多重非線形効果を考慮するためのパラメタv1とv2を新たに定義し、その物理的意味について述べるとともに、2000年鳥取県西部地震および1995年兵庫県南部地震への適用事例を示した。提案するパラメタは、簡易なものであるにも関わらず、非線形性の影響を受けたサイトでの本震地動の合成結果を著しく改善するものである。
全文 /PDF/vol042-no01-03.pdf