研究について

研究成果

非線形不規則波浪を用いた数値計算の港湾設計への活用に関する研究

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1036 2002年12月
執筆者 平山克也
所属 海洋・水工部 波浪研究室
要旨 本研究は、港湾設計や海岸保全などの実務において、ともに多用される波浪変形計算法と造波装置を用いた水理模型実験の現状を概説するとともに、その高精度化を目的として、修正ブシネスク方程式を基礎とする新たな波浪変形計算モデルの計算理論とその基本的な計算特性、および実海域でみられるさまざまな多方向不規則波を造波する方法と数値計算におけるそれらの応用性についてとりまとめ、広く実務へ適用しうる波浪変形計算法を提案するものである。  水深変化の少ない比較的単純な地形の港湾では、港外の屈折・浅水変形が計算されるエネルギー平衡方程式と、港内の回折・反射が計算される高山法をうまく組み合わせた波浪変形計算システム(P025)を用いて、港内外の波高分布を効率よく算定することができる。一方、さまざまな波浪変形が同時に生じる複雑な地形の港湾や、波の非線形化や砕波変形が無視できない海浜などを対象とした実務においては、水の運動をより厳密に解くことができるブシネスクモデル(NOWT-PARI、Ver4.6β)を適用することが有効である。本研究では、この新たな波浪変形計算モデルにおける解の厳密性や適用性、およびさまざまな港湾・海岸構造物や自然地形を対象とした境界処理法の妥当性を、波動理論上の厳密解や模型実験結果、および従来の計算、モデルによる計算結果との比較によって検証した。さらに、境界処理法に関する現在の問題点や今度の改良点について、その計算理論や具体的な計算法を述べるともに、その効果について現地を対象とした模型実験結果により検証した。  一方、造波装置を用いた水理模型実験では、実海域の波浪場を水槽内に再現することが可能ある。本研究では、L型配置多方向不規則造波装置を用いて、水層内に効率的に多方向不規則波する方法や、二方向波浪および非定常波浪の造波方法を提案した。さらに、これらの造波方法が、ブシネスクモデルを用いた数値波動水槽における入射境界に適用し得ることを示した。  本研究における主要な成果は、波浪変形問題を対象とした実務におけるブシネスクモデルの計算理論とそれらの計算精度を検討したことに加え、さまざまな境界処理法の改良を通じて、地形条件や境界条件、および沖波条件に対するブシネスクモデルの適用範囲を拡張したことである。
全文 /PDF/no1036.pdf