研究について

研究成果

河口域における溶存酸素濃度の動態-長良川河口堰下流部におけるモニタリングデータの解析-

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 041-03-02 2002年09月
執筆者 中村由行、栗木秀治、藤野智亮
所属 海洋・水工部 沿岸生態研究室
要旨  河口域は河川流域と沿岸海域の境界に位置し、物理的及び生物化学的要因が複合しながら、溶存酸素(DO)濃度が空間的・時間的に大きく変動する。物理的要因の中では混合強度の影響が大きいと予想されるが、河口域のDOの変動機構に関して、複合する要因を整理し、物理的な影響度を抽出した例は少ない。  本研究においては、長良川河口堰下流部においてモニタリングされたデータを用い、河口域におけるDO濃度の基本的な変動機構を解析した。特に、混合に大きな影響を持つと考えられる潮汐作用と河川流量という物理作用から、河口域の貧酸素水塊形成の基本的な過程を整理した。堰運用前後に共通した特徴は、底層DOの変動が大潮・小潮のサイクルに応じた変動を主体とし、河川流量変動に伴う撹乱が重なって生じている点である。大規模出水時には、底層DO濃度は増水時に一時的に増加するが、流量が低減した後には極端な高塩分化に伴った貧酸素化が生じることが多い。これは、伊勢湾奥部に形成された貧酸素水塊の遡上によって生じる。堰運用前後の違いは、主として混合形態の差によって生じている。堰の運用前では、大潮時には強混合であり、混合が活発化し貧酸素化が解消されていた。しかしながら、運用後には大潮時でも緩混合的であり、鉛直混合は不十分で、表層・底層の水質に差が見られ、貧酸素化の回復が不十分である。
全文 /PDF/vol041-no03-02.pdf