研究について

研究成果

地盤解析汎用プログラム(GeoFem)による支持力解析および斜面安定解析

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1023 2002年06月
執筆者 土田孝、水野健太
所属 地盤・構造部 土質研究室
要旨  港湾空港技術研究所によって開発された地盤解析汎用プログラム(GeoFem)は、地盤の変形解析のみならず地盤の安定解析にも対応したFEM解析プログラムである。一様地盤の支持力や比較的単純な斜面安定問題に対するGeoFemの適用性については既に開発者によってまとめられているが、境界条件が複雑になった場合の適用性や現行の港湾の基準に採用されている円弧すべり解析法とGeoFemとの対応関係などについては、詳しくまとめられた資料がほとんどないのが現状である。  本資料は、浅い基礎の極限支持力、斜面や護岸の安定問題および矢板式係船岸に代表される地盤~矢板系構造物の安定問題を対象にして、GeoFemを実務的に使用する上での解析上の留意点や慣用設計法との関係について詳細に検討したものである。本資料の主要な結論は以下の通りである。 1)GeoFemによる支持力係数Nc、Npは、内部摩擦角がφ’≦30°の場合に Prandtlらの塑性理論解とほぼ一致した。しかし、がφ’>30°ではGeoFemは塑性理論解に比べ過小な支持力係数を計算した。支持力係数Nrについては、GeoFemによる解析解は塑性理論解とほぼ一致した。 2)岡村らによる極限平衡理論解を真値と仮定するならば、GeoFemは上部砂-下部粘土二層地盤における極限支持力を精度よく算定することができる。これに対し、実務設計で用いられる荷重分散式は、上部砂層の内部摩擦角ががφ’<30°の場合に、極限平衡理論解やGeoFemと比較して大きな支持力を計算する傾向にある。 3)GeoFemによる砂質地盤上の重力式護岸の斜面安全率は、修正フェレニウス法による円弧すべり解析結果とほぼ同じ値を計算した。ただし、隅角部などの要素分割の細かさによって計算される安全率は大きく変化した。 4)矢板式係船岸に代表される地盤~矢板系構造物の安定問題に対して、矢板の外側に塑性変形が生じるような条件では、GeoFemは円弧すべり解析と同程度の安全率を計算した。ただし、GeoFemでは、要素分割や地盤と矢板との間の摩擦の扱い方によって大きく安全率が変化したので、モデル化の際に注意が必要である。 5)GeoFemにおいて、矢板が降伏応力に達したときの地盤強度低減率を地盤~矢板系構造物の安全率として評価する方法を示した。この場合、地盤の弾性係数を適切に与えることが重要である。 6)実用的な観点から、矢板の剛性を考慮した新しい円弧すべり解析法を提案した。粘性土地盤に提案法を適用した結果、提案法とGeoFemによる安全率は必ずしも一致しなかったが、矢板曲げ剛性EI~安全率Fsの関係は、両解析法で同じような傾向を示した。
全文 /PDF/no1023.pdf