研究について

研究成果

難視界時の把持作業における拡張現実感(AR)を用いた視覚補完手法

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 041-02-06 2002年06月
執筆者 内海真、平林丈嗣、吉江宗生
所属 施工・制御技術部 制御技術研究室
要旨  港湾工事では、捨石均し等多くの作業を潜水士による人力施工に頼っている。こうした作業は海中の厳しい環境下で行われ、効率と安全性向上の面からも機械化が必要とされている。このような現状において、水中バックホウに各種アタッチメントを取り付けて使用することにより、作業の汎用性を増し、水中施工の機械化が進むと考えられる。中でも把持装置を取り付けることで、根固めブロックや捨石、被覆石の移動や敷設、破損した異形ブロックや被災した港湾構造物の解体・撤去作業に活用できるようになる。  地上において、遠隔操作はビデオや目視による視覚情報で、把持を行うことができる。しかしながら、海中では泥や砂の巻上げによる濁りで、視覚が得られなくなる。これにより、把持対象物の形状や重心位置を認識することが難しく水中における把持作業の効率は低下してしまう。そこで、拡張現実感(AR:Augmented Reality)の方法を把持システムに適用することを考えた。AR手法により、拡張、加工した複数の情報を用いて欠損した視覚の補完を行う。本把持システムでは、この補完のための情報として、力覚や触覚を選択した。この力覚や触覚を用いてバイラテラル(双方向〉制御系を構成し、操作者に対して、手で把持したような感覚を伝達する。さらに、触覚によるイメージである触像の視覚化を行う。ハンドの指が構造物に触れたとき、ディスプレー上のその接触点に多面体:触像体を描画する。触像体を用いることで操縦者は簡単に物体の形状や重心位置を推測することができる。この手法の有効性を確認するため、シミュレーションプログラムを開発し被験者による把持作業実験を行った。この把持作業実験により、ARを用いた視覚補完手法の有効性が明らかになった。
全文 /PDF/vol041-no02-06.pdf