研究について

研究成果

ブシネスクモデルにおける任意反射境界処理法を用いた非線形部分重複波の計算

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 040-04-01 2001年12月
執筆者 平山克也
所属 海洋・水工部 波浪研究室
要旨  防波堤や護岸における波の反射を適切に計算するために、平山・平石(2001)は、消波ブロックなどの消波材による波浪減衰機構を透水層によりモデル化し、プシネスクモデルにおいて波の部分反射を直接的に計算する任意反射境界処理法を開発した。透水層モデルでは、消波工の内部で生じる波浪減衰は、透水層による層流抵抗と乱流抵抗によって表現される。これらの抵抗係数は、消波材の形状や大きさ、および積み方や空隙率などの物理量から客観的に定量化される。また、消波工の法面勾配は、透水層の空隙率に水平分布を与えることによって表現され、透水層幅は、消波工の設置幅と等しく設定される。  本研究では、この透水層モデルの基本特性と汎用性について詳細に検討した。まず、反射率に関する透水層パラメータの感度分析を行い、消波断面の諸元や波浪条件と反射率との関係を整理した。つぎに、1/30勾配斜面の岸側に法面勾配の異なる2種類の消波ブロック被覆堤、および繊維状消波材を充填した直立消波堤を設置して、透水層モデルを用いた非線形波の反射計算を実施した。断面水路を用いた検証実験との比較では、反射率や入・反射波のスペクトル形状の変化、および部分重複波形の再現性に注目した。得られた結果はおよそ次のようである。 1)消波ブロック層を透水層とみなして計算された反射率は、空隙率λ=0。3~0。8のとき小さい。 2)空隙率λが1に近いとき、透水届モデルによる波浪減衰は、層流抵抗よりも乱流抵抗のほうが支配的である。 3)透水層モデルは、消波工の法面勾配や消波材の諸元が異なるそれぞれの 消波断面において、入射波の波高や周期、および水深によって変化する反射率や入・反射波のスペクトル特性を非常によく再現した。 4)空隙率λ=1(このとき透水層モデルは完全反射境界となる)とした直立堤を対象とした反射計算では、反射率はほぼKr=1。0となった。一方、模型実験で得られた反射率はKr=0。6~1。0であった。模型実験におけるエネルギー損失、非線形波に対する反射率の推定方法、波の非線形性に関する数値モデルの近似精度などに関する検討が、今後の課題である。
全文 /PDF/vol040-no04-01.pdf