研究について

研究成果

自然・人工干潟の地形および地盤に関する現地調査-前浜干潟の耐波安定性に関する検討-

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 1010 2001年09月
執筆者 姜閏求、高橋重雄、奥平敦彦、黒田豊和
所属 海洋・水工部 耐波研究室
要旨  近年、干潟の優れた環境機能が認識されるにつれて、人工干潟の造成は今後ますます増えると予想される。ただし、これまでの干潟に関する研究は生物・水質関連のものが主であり、その地盤の安定性に関する研究は数少なく、人工干潟の設計法はまだ十分確立されるには至っていないのが現状である。したがって、自然干潟のみならず、これまで造られた人工干潟の現状を把握することは重要である。本報告は、2000年8月から2001年4月までに実施した自然および人工干潟における地形や地盤の安定性に関する現地調査結果を報告するものである。調査対象地は、自然干潟5ケ所と人工干潟7ケ所であり、また干潟との比較のため自然砂浜1ケ所と人工海浜3ケ所も含んでいる。調査では、目視観察、深浅測量、コーン貫入試験および柱状採泥等を行った。調査結果に基づいて、干潟地形や地盤の状況、干潟地盤の安定性について考察を行っており、また人工干潟の設計に関する新たな視点を示している、得られた主要な結論は以下の通りである。 1)自然干潟の前浜は、満潮位斜面部とその間の非常になだらかなテラス部分からなっており、通常の砂浜のようにそれを一体として取り扱うことは困難である。通常の自然干潟では前浜のテラスは、干潮位汀線から200~350m までの多段バー・トラフ部とその岸側の平坦部からなっている。多段のバー・トラフ部は平坦部の沖で来襲波を砕波させ平坦部を守っており、耐波安定性の観点から非常に重要である。人工干潟の場合も、多段のバー・トラフ部がまず形成されている。生物の分布状況が自然干潟に近い状況の人工干潟を造成するためには、200m以上のテラス幅が必要になる。 2)設計では、地盤内の地下水の低下を考慮する必要があり、自然干潟に近い状況にするためには、干潮時の地下水位をある程度の高さに保持する必要がある。すなわち、地盤の粒径(透水係数)が大きいほど①テラス幅を大きくするか、あるいは②テラスの地盤を低くする必要がある。 3)粘土性の浚渫土を覆砂した人工干潟では、粘土層が覆砂層の変化に連動して変化すること、また粘土層が露出することがある。したがって、覆砂形式の干潟では、覆砂層における砂の動き、そして下層の強度について十分な検討が必要である。
全文 /PDF/no1010.pdf