研究について

研究成果

震源近傍の地震動の方向性に関する研究とその応用

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 040-01-05 2001年03月
執筆者 野津厚、井合進、Wilfred D.IWAN
所属 構造部 地震防災研究室
要旨 1995年兵庫県南部地震を契機として、土木構造物の耐震性を検討する際には、建設地点(サイト)近傍の内陸活断層で発生する地震による地震動を必要に応じて考慮すべきであるという共通認識が学会等において形成されてきた。港湾の分野においても、いわゆる耐震強化施設の整備にあたっては、このような地震動をレベル2地震動として考慮することが技術基準に定められた。耐震強化施設の整備を合理的に実施するためには、大地震の震源近傍の地震動の特性をよく調べておく必要がある。本研究では震源近傍の地震動の諸特性のうち方向性に着目して検討を行った。近年の強震動地震学の進歩により、断層モデルと弾性波動論によりサイトの地震動を理論的に計算する手法が確立され、利用可能となっている。本研究ではこのような手法を用い、断層のメカニズムや破壊伝播方向とサイトの位置関係など地震動の性質に影響すると考えられる震源パラメタを様々に仮定して、それらのパラメタが震源近傍の地震動の方向性に及ぼす影響を調べた。その結果、大地震の震源近傍で最も振幅の大きい地震動は断層面と地表面の交線として定義される断層線に直交する方向に発生する性質があり、この性質は震源パラメタを変化させても変わりにくいことがわかった。この結果は、日本や米国における震源近傍の強震観測結果とも整合するものである。震源近傍の地震動の方向性を工学的に利用することで地震災害対策の新しい手法を開拓できる可能性がある。そのひとつとして、耐震強化岸壁の法線方向を断層線に直交する方向とすることにより、耐震強化岸壁の耐震性能を一層向上させることができる。このような考え方が有効であることをモデル耐震強化岸壁の変形計算により実証した。
全文 /PDF/vol040-no01-05.pdf