研究について

研究成果

台風9918号による越波災害に関する一考察

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0972 2000年12月
執筆者 平石哲也、平山克也、河合弘泰
所属 水工部 波浪研究室
要旨  台風9918号は、1999年9月24日に、八代海沿岸および周防灘沿岸において甚大な被害を与えた。これは、台風による高潮偏差の最大値の出現時刻が満潮時刻と近かったために合成潮位が大きくなり、局所的に浸水被害を生じたことが主要因である。また、周防灘の北九州空港護岸における防波護岸の倒壊に関しては、越波による裏込め土の流出が大きな要因となったことが明らかにされている。八代海西部に位置する龍ヶ岳町においても、大道港防波堤が150mにわたって滑落するなどの被害が生じた。午前4:50発令の迅速な避難勧告により、幸いにも人命は守られたものの小屋河内地区の住宅群や上天草総合病院が浸水等の被災を被った。ただし、被災直後の現地調査によると護岸の施設被害は生じておらず、推算高潮潮位も護岸天端を越えなかったので、龍ヶ岳地区では高波による越波の影響が甚大であったと考えられる。  そこで、龍ヶ岳地区を対象として、詳細な現地調査と護岸前面の波浪変形および越波計算を実施し、被災原因の究明を行った。また、漁港西側の小屋河内地区では家屋破壊が生じたにも係わらず、漁港東側に位置する上天草総合病院では軽微な浸水被災にとどまり、その差が顕著であった。これは、病院地区の護岸前面に設置された護岸堤の防災効果によるものと推定し、離岸堤による越波量の低減効果を類推し、現地の状況と比較を行った。その結果、台風来襲期前後に異常潮位等による40cm程度の界面上昇が認められると仮定すれば、計算で推測できる越波流量が現地観測値をほぼ説明できることがわかった。また、離岸堤の存在により家屋に作用する水流圧が大幅に低減されることとが判明し、今後の高潮時の越波対策に有益な資料が得られた。
全文 /PDF/no0972.pdf