研究について

研究成果

内湾での人工島建設にかかる環境影響評価に対する2,3の考察

発行年月 港湾空港技術研究所 資料 0961 2000年06月
執筆者 鶴谷廣一、細川恭史、栗山善昭、中村由行、鈴木武、日比野忠史、古川恵太、中川康之、岡田知也、桑江朝比呂
所属 海洋環境部 海洋環境部長
要旨  伊勢湾に人工島方式で設置される中部国際空港の環境影響評価書に対し、日本海洋学会海洋環境問題委員会から見解が出され「海の研究」に掲載された。見解には、影響評価に際して適切な手法が選択されていないのではないかという疑問も含まれていた。これを契機に、内湾に人工島などを設置する際の、環境影響予測の手法、評価の方法などを現在の知見をもとに考察した。  内湾での物質の輸送の視点からは、岸近くでの波を主たる外力とする輸送のシステムから、やや沖合での潮流や吹送流などを主たる外力とする輸送のシステムを経て、内湾の大きな環境構造による水塊間の輸送システムなどに到る。ある種の構造性を持っている。生物相も、潮間帯、浅場、沖合、外海と様相を変え、それぞれつながりを持っているものの独自の振る舞いを示している。このような仕組みに対する理解に立って、人工島の設置位置や規模、周辺環境の様態に応じ、影響予測や評価が行われることになる。  人工島設置に伴う沿岸の汀線地形の変化予測、人工島周辺での底質粒度の変化予測、人工島周辺での水質の変化予測の予測評価の手法を取り上げ、予測技術の現場と手法選定上の留意点を整理した。予測評価の目的に応じた手法の選定のためには、個々の手法の持っている特性に対する理解がまず必要である。また、ある特定海域での適用手法を、他の海域において適用することは必ずしもふさわしくないこともあり、内湾環境の構造性に配慮し、立地位置の自然条件に応じた手法の選定が重要であることを指摘した。そのうえで、今後の技術開発の方向について提示している。環境影響予測に際しては、汎用化された予測モデルの機械的な適用で済ませることなく、その場の自然環境や環境影響の機構に関する十分な調査と理解がまず必要である。
全文 /PDF/no0961.pdf