研究について

研究成果

大船渡湾における湾外水の密度変動が湾内水環境に及ぼす影響の定量的評価

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 039-02-04 2000年06月
執筆者 岡田知也、中山恵介、日比野忠史、細川恭史
所属 海洋環境部 環境評価研究室
要旨  湾内の流動および水質変動を数値計算を用いて評価・予測する際には、湾外の境界条件を与える必要がある。既往の研究により湾外の境界条件の変動が湾内水質の変動に影響を与えていることは明かにされている。しかしながら、湾外の境界条件の変動に対してどの程度の水質変動が湾内に起こるかについては、今のところ定量的な評価はなされていない。本研究では、そうした影響伝播をモデル化し、湾内水質の長期再現計算を試み、湾外の水質変動が湾内水質へ与える影響の評価を行った。  長期再現計算には鉛直1次元モデルを採用し、境界条件は実測値を用いて与えた。モデル中において湾外水の影響は潮汐による海水交換率と湾内外の密度差に起因する海水交換として表現した。密度差に起因する海水交換率のモデル定数の決定には、プルームのようなフロントでの非定常混合が卓越している現象に対しても精度よく解くことができる非静水圧次元モデル(CIP-LES-SF)を用いた。このモデル化により湾内外の鉛直方向の密度分布に対して、湾外の湾内への密度差に起因する海水交換率が算出可能となった。  底層部のDO濃度の変動に着目し長期再現計算を行った結果、大船渡湾の底層部の貧酸素水塊の形成・消滅時期に対し、密度差に起因する海水交換の寄与が大きいことが明らかとなった。また、その発生頻度はそれほど多くは無いものの、海水交換率は非常に大きく、潮汐による交換時間は約60日であるのに対し、密度貫入による交換時間は1~3日であることが示された。
全文 /PDF/vol039-no02-04.pdf