研究について

研究成果

内湾域の水環境に影響を及ぼす物理的要因に関する考察-瀬戸内海総合水質測定調査データによる解析-

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 039-02-03 2000年06月
執筆者 宮野仁、日比野忠史、中山恵介、岡田知也、細川恭史、浅井正
所属 海洋環境部 環境評価研究室
要旨  瀬戸内海は豊後水道、紀伊水道および関門海峡の3つの海峡を通して外海に面し、かつ、21の1級河川が流入している。外海や河川からの流入水塊の水質・量は季節的に変化するため、内海水は流入水塊の微妙なバランスによって混合や滞留の時間・空間スケールが変化すると考えられる。本論文では、季節に1回観測される広域の水質データ(第三港湾建設局・瀬戸内海総合水質測定調査データ)を基に、気象庁海洋観測資料・海況解析データおよび河川流量データを用いて、瀬戸内海における平年の水質状態を把握し、これと比較することによって年や季節の変化を起こす物理的要因について検討を行った。  黒潮流路に伴った瀬戸内海周辺海域の水温変動について解析した結果、黒潮流路と潮岬(紀伊水道)および足摺岬(豊後水道)の海面水位・水温との対応が良いことがわかった。黒潮が非蛇行流路をとる時には紀伊水道から黒潮系暖水塊が流入し、蛇行流路をとる時には豊後水道から流入すると考えられ、外洋と接する境界付近での水塊特性やその挙動を把握することが重要であると示唆された。  さらに、保存系物質である塩分の季節平均分布と瀬戸内海へ流入する河川水の挙動を考慮した数値モデル解析により、海峡毎に異なる海水交換量を逆推定できた。東部海域の湾・灘を隔てる海峡付近での海水交換に寄与する乱れ(拡散)エネルギーを詳細に検討した結果、紀淡~鳴門~明石海峡の順に大きく、10月期、2月期に比べて5月期、8月期の方が大きくなることが認められた。このことは、湾・灘の海水交換量を精度良く見積もるためには、海域に実在する水塊の性質を適正な時間・空間スケールで評価する必要があることを示唆している。
全文 /PDF/vol039-no02-03.pdf