研究について

研究成果

二つの海域を連結する狭窄部での流れに関する研究

発行年月 港湾空港技術研究所 報告 039-01-01 2000年03月
執筆者 Mohamed ELZEIR、鶴谷広一、細川恭史、日比野忠史
所属 海洋環境部 環境評価研究室
要旨  二つの大きな海域を結び付けている水路は航海に果たす役割は大きく非常に重要であるものの、内部の流れは非常に複雑であり、またその調査は極めて困難である。したがって、このような水路内の流動解析は科学的な研究対象として非常に重要である。本研究では、エジプトのスエズ運河および日本の関門海峡を対象として検討を行った。解析には、利用可能な観測データと2次元有限要素法を用いた。また、本研究では時間スケールを強制外力の時間スケールによって二つの基本スケールに分割し検討を行った。一つは潮汐運動スケールの短い時間スケール、一つは大気圧変動スケールの長い時間スケールである。本研究で得られた主要な知見を以下にまとめる。 1.2つの開境界を有し移流や波動によって制御さている領域に対しては、領域内から外部へ伝播する波が境界で反射を起こさず境界を透過するように開境界の条件を定めるべきである。そこで、Blumberg and Kantaによって定式化されたSommerfeld radiation 開境界条件の有限要素形式化を行い、また、それが適切であることを示した。 2.本研究で用いた数値モデル(2次元有限要素法)は検討するシミュレーションに対して十分適用可能であることが示されたが、流速についてはより一層の検討が必要である。 3.2つの海域を連結する幅の狭い水域は次の基本的特性を有する。一方の海域から入射した波の伝播速度と流体の移動速度は異なる。両者の差は水路内に大きな水面勾配を引き起こす。それ故、大きな水面勾配に対する直接的な応答として、水路内では大きな流速が生じ、船舶の航行に支障をきたす。この特性はスエズ運河の南側と関門海峡の内部で観察される。 4.スエズ運河内のビター湖は、水理学的に相互に依存した2つの区域にスエズ運河を分割している。 5.KantaraとPort Saidにおける水位はアレクサンドリアの気圧に対して反比例している。このことは日比野・鶴谷が水位と気圧の間に相関関係があるとみなしたことと良く一致している。ShalufaとPort Tawfiqの水位は直接アレクサンドリアにおける気圧に比例するが、インド洋を広く覆う気圧に対しては反比例していることが期待される。他の場所における水位は気圧との明確な相関はない。 6.関門海峡付近の水位は日本海と瀬戸内海の両方を広く覆う気圧と極めて高い相関がある。
全文 /PDF/vol039-no01-01.pdf